収益物件売却の手取り計算|残債・諸費用・税金を差し引く【2026】

一棟アパートを売却し、電卓とお札で手取りを計算するイメージ
INDEX目次

この記事のポイント

  • 手取り=売却価格から「残債・諸費用・税金」を差し引いた最終キャッシュ。売却価格と手取り額は別物
  • 手取りを大きく動かすのは4要素:①ローン残債 ②仲介手数料 ③譲渡所得税 ④売却価格そのもの
  • 価格帯別の手取り改善幅:仲介手数料が変わると 税後でも数十万〜数百万円 手取りが動く
  • シミュレーションは「税込」で読む:仲介手数料・繰上返済手数料・測量費等の現金支出は税込で発生
  • 計算の前提を確認:取得費(簿価)・所有期間・残債・売却価格の4つを揃えれば、誰でも自分の数字に置き換えられる

30秒で分かる結論

収益物件売却の手取りは、次の3ステップで読み解けます。

  1. 「現金支出」を引く:ローン残債+諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・繰上返済手数料・測量費等)
  2. 「税金」を引く:譲渡所得税(売却価格−取得費−譲渡費用に対して、長期20.315%/短期39.63%)
  3. 「残った金額」が手取り:売却価格の約40〜90%が手取りになるのが一般的

「いくらで売れるか」と同じくらい、「税引後にいくら残るか」を先に試算しておくことが、後悔しない売却判断につながります。

なお、譲渡所得税の計算式・短期/長期の判定・取得費の取り扱い・3,000万円特別控除が使えない理由といった「税金の基本」は、姉妹記事「一棟アパート売却の税金|譲渡所得税の計算・5年ルール・手取りシミュレーション【2026年版】」で詳しく解説しています。本記事は 「手取り=最終的に手元へ残る現金」 という視点に絞ってお届けします。


「売却査定で1億円と言われたけれど、手元に残るのは結局いくら?」——一棟収益物件のオーナー様から、最も多くいただくご相談のひとつです。

売却価格と手取り額は 別物 です。売却価格からローン残債、仲介手数料、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、繰上返済手数料、測量費といった 支出が次々に差し引かれて、最後に残った金額が「手取り」になります。

弊社の取扱範囲(首都圏一棟物件 5,000万〜3億円帯)でこれまで見てきた傾向では、売却価格の 約40〜90% が手取り額になるケースが多く、特に「ローン残債の有無」と「仲介手数料の上限/割引」の2点で手取りが大きく動きます。

本記事では、収益物件売却の 手取り計算の全体像 と、価格・残債・諸費用・税金を組み合わせた モデルシミュレーション、そして手取りを少しでも増やすための 見落としやすいポイント を、2026年時点の制度に基づいて整理しました。

なお、本記事の数値はすべて モデルケース であり、個別の物件・売主・税務状況によって結果は変動します。具体的な税額・税務判断は必ず顧問税理士にご相談ください。


手取り計算の基本式と「差し引かれる要素」全体像

収益物件売却の手取り計算は、次の式に集約されます。

手取り額 = 売却価格 − ローン残債 − 諸費用 − 譲渡所得税

シンプルですが、それぞれの要素には複数の項目が含まれています。売却価格から「現金支出」と「税金」が段階的に削れていくイメージで全体像を捉えると、自分の数字に置き換えやすくなります。

▼ 結論:1億円売却→残債5,000万あっても約4,192万円が手元。「全額残らない」前提で読み始めるのが鉄則

【図F1:手取り計算ウォーターフォール】(既存・維持)

ウォーターフォール図で見ると、1億円の売却価格のうち、最終的に手元へ残るのは約42%(4,192万円)。この比率は 残債の有無・取得費(簿価)・所有期間 で大きく変動します。次のセクションでは、まず2024年以降の金利上昇環境で売却判断にどう影響するかを整理した上で、削れていく要素をひとつずつ確認していきます。


2024年以降の金利上昇環境で「売却 vs 保有 vs 借換え」をどう判断するか

「売れば手取りはこれくらい」がわかっても、そもそも今売るべきか・あと数年保有すべきか の判断軸がないと、出口戦略は決められません。2024年3月の日銀マイナス金利解除以降、政策金利は段階的に引き上げられ、2025年12月の追加利上げで0.75%程度(30年ぶり水準)に達しました。アパートローンの実勢金利も、2021年頃の約1.80%水準から 2026年5月時点で約2.55%目安 まで上昇しています。

この環境変化は、保有中物件のキャッシュフローと、売却の合理性判断を直接的に動かします

▼ 結論:DSCR・残債・減価償却の3軸で「今売るべきか」を判定。1.3未満や減価償却終了が見える局面は出口検討タイミング

金利上昇環境の前提(2026年5月時点)
日銀政策金利
0.75%(2025年12月)/30年ぶり水準
過去比較
2024年3月マイナス金利解除 → 累計+0.85%
借入金利の目安
2021年 約1.80% → 2026年5月 約2.55%
試算前提(モデルケース)
1億円借入/30年/元利均等/空室率5%/管理費5%
※政策金利≠実務の借入金利(金融機関・属性・物件条件で変動)
金利1.80% vs 2.55% の年間返済額比較(借入1億円・30年・元利均等)
1.80%

約 432万円/年
2.55%

約 477万円/年 (+45万円)
目安:同じ物件でも金利上昇で返済額が増え、キャッシュフローが悪化します。
売却 vs 保有 vs 借換え:判定フロー(モデル)
自分の物件はどう?
① 現在のDSCRは?
DSCRの目安で、まず「保有/借換え/売却」の優先度を分けます。
DSCR
1.3以上
✓ 保有継続が選択肢
DSCR
1.0〜1.3
△ 借換え or 売却検討
DSCR
1.0未満
× 売却検討を強く推奨
② 残債 < 売却査定額か?
オーバーローンは、出口の自由度を一気に下げます。
Yes
通常売却が可能
(決済で残債一括返済→抵当権抹消へ)
No
自己資金補填 or 任意売却
(金融機関との調整が前提)
③ 減価償却終了が見える築年数か?(例:木造22年超)
償却が薄くなると、税後CFが急に悪化しやすいです。
Yes
税後CF悪化前に出口検討
(売却/借換え/買換えの比較へ)
No
保有継続でも償却メリットあり
(ただし金利上昇は別途影響)
※DSCR=年間NOI÷年間元利返済額。1.0未満は返済原資不足。
※モデルケース。具体的な判断は顧問税理士・金融機関にご相談ください。

金利+0.75%が、キャッシュフローに与える影響

※政策金利は2025年12月18-19日の金融政策決定会合で 0.75%程度 に引き上げ(出典:日本銀行 金融政策決定会合の決定内容)。借入金利の2.55%は 弊社提携金融機関の目安レンジ であり、個別融資条件で変動します。

借入1億円・期間30年・元利均等返済で試算すると、金利1.80% → 2.55%の上昇で年間返済額は約432万円 → 約477万円(+45万円/年)。月額にして約3.7万円のキャッシュフロー減です。これは、首都圏一棟物件で表面利回り8%・税引前CF 280〜350万円規模の物件にとって、年間CFの15%以上を返済が食う計算になります。

「売却が合理的になる」3条件

弊社のこれまでの取扱傾向では、次の3条件のうち2つ以上が当てはまる場合、売却タイミングとして検討する価値が高まる と考えています。

  1. DSCR(債務返済比率)が1.3を下回る:年間NOI(純営業収益)÷ 年間元利返済額。1.0未満なら返済原資不足。借換えで改善できなければ売却が合理的
  2. 残債<売却査定額:オーバーローン解消が見える状態なら、通常売却の選択肢が広がる
  3. 減価償却終了が見える築年数:木造22年超など、償却切れによる税後CF悪化が見えてきた段階

「政策金利」と「実務の借入金利」の関係

ここで1点注意点を。政策金利=あなたの借入金利ではありません。アパートローンの実勢金利は、政策金利を起点に金融機関・物件種別・属性・LTV・期間などで変動します。本記事の試算前提(借入金利2.55%)も、あくまで 首都圏一棟物件・属性良好な売主のモデルケース です。具体的な金利は取引金融機関の担当者にご確認ください。


手取りから差し引かれる6つの要素

手取り額を読み解くには、売却価格から差し引かれる 6つの要素 を理解しておく必要があります。それぞれが「税込いくらか」「課税対象に入るか」を整理した一覧マップが下記です。

▼ 結論:6項目のうち、手取りを最も大きく削るのは①ローン残債と②仲介手数料の2つ。残りは小さくても見落とさない

【図F6:手取りから差し引かれる諸費用一覧マップ】(既存・維持)

① ローン残債

金融機関から 残高証明書 を取り寄せて確認します。決済日に売却代金から一括返済するのが一般的で、これに加えて 繰上返済手数料(数千円〜数万円、金融機関により異なる)が発生します。完済まで残債がある場合は、抵当権抹消登記費用も別途必要です。

② 仲介手数料

宅建業法で 上限額 が定められており、速算式は 「売買代金 × 3% + 6万円 + 消費税」(売買代金400万円超の部分)です。1億円の売却なら、上限は税込336.6万円。譲渡所得税の計算上は「譲渡費用」に算入 されるため、後述する税後インパクトの計算に影響します。

弊社の 売主応援割(売却専任媒介の場合 0.5%+消費税) を使うと、この上限額を大幅に下回り、税後でも数十万〜数百万円規模で手取りが改善します(詳しくはセクション「仲介手数料の差は、税後でも手取りを大きく動かす」で実額提示)。

③ 印紙税

不動産売買契約書に貼付する収入印紙代です。1億円超〜5億円以下 の契約金額なら、2027年3月末までの軽減措置で 6万円。契約書は売主・買主それぞれが保管するため、各自1通分の印紙税を負担するのが一般的です。

④ 登録免許税(抵当権抹消)

ローン完済時に行う 抵当権抹消登記 にかかる税金で、不動産1個につき 1,000円。一棟アパート(土地1筆+建物1個)なら2,000円が目安です。司法書士に依頼すると、報酬として 1件あたり1.5〜3万円 が別途発生します。

⑤ 譲渡所得税

売却価格から 取得費(簿価)+譲渡費用 を差し引いた「譲渡所得」に対して課税される税金です。所有期間で税率が約2倍 変わり、判定は 「売却した年の1月1日時点」で5年超か否か。長期譲渡20.315%/短期譲渡39.63%。

譲渡所得税の計算式、取得費・譲渡費用の中身、引渡し日の判定、5%概算取得費のリスク、3,000万円特別控除が一棟収益物件に使えない理由といった 税金の正典内容 は、姉妹記事 一棟アパート売却の税金【2026年版】 で網羅していますので、本記事では計算結果のみ扱います。

⑥ その他諸経費

物件・取引によって発生する変動的な費用です。代表的なものは:

  • 測量費:境界確定が必要な場合、30〜100万円
  • 残置物撤去・解体費:旧家屋や残置物がある場合、数十万〜数百万円
  • 立退料:賃借人がいる空室化前提売却の場合、賃料の数か月〜数年分
  • 繰上返済手数料:金融機関により0〜数万円
  • 消費税:売主が 課税事業者 で、建物部分 に課税される場合、土地建物按分後の建物価格×10%

これらは案件ごとに有無が分かれるため、売却前の総コスト試算で 個別に積み上げる必要 があります。


残債あり/なしで手取りはここまで変わる

手取り計算で 最もインパクトが大きい1要素 は、実は税金ではなく ローン残債 です。同じ売却価格1億円でも、残債の有無で手取り額は 2倍以上 変わります。

▼ 結論:同じ売却価格1億円でも、残債の有無で手取りは2倍以上違う。「いつ完済できるか」が出口時期の主要因

【図F3:残債あり・完済済みの手取り比較】(既存・維持)

オーバーローンの場合:自己資金補填 or 任意売却の検討

逆に 「残債 > 売却価格」(オーバーローン) の状態だと、決済日に売却代金だけでは残債を完済できず、手取りはマイナス になります。この場合の選択肢は2つ。

  • 自己資金で差額を補填して通常売却:抵当権を抹消できれば登記移転が可能
  • 任意売却を検討:金融機関の同意を得て、売却価格と返済条件を協議

任意売却は 金融機関の判断・残債処理・売主の信用情報 が絡む専門領域です。状況によって対応が大きく分かれるため、本記事では概要に留め、個別の状況は弊社の投資相談または金融機関にお問い合わせください

【売却前にチェックすべき3つの数字】 - 現在のローン残債(金融機関の残高証明書) - 想定売却価格(複数社査定の中央値) - その差額 = 売却での「最大手取り余地」


手取りシミュレーション 5ケース

ここからは、実際の数字でモデルケースを見ていきます。首都圏の一棟収益物件 を対象に、価格帯・所有期間・残債の組み合わせを変えた5ケースを比較します。

すべて 税込ベース・モデルケース での試算です。実際の手取りは物件・売主・税務状況で変動するため、ご自身の物件で試算する際は、次の図F4「入力シート」の項目を埋めてみてください。

▼ 結論:自分の数字を当てはめるなら、この5項目をまず手元に揃える。次のシミュレーションが読みやすくなる

【図F4:手取りシミュレーション入力シート】(既存・維持)

ケースA:1億円・長期譲渡(所有10年)・残債5,000万円

項目金額
売却価格1.0億円
ローン残債▲5,000万円
仲介手数料(税込・上限)▲336.6万円
印紙税▲6万円
抵当権抹消(2件)▲0.2万円
繰上返済手数料(税込)▲3万円
その他諸経費(税込)▲30万円
諸費用合計▲375.8万円
取得費(簿価・減価償却後)7,500万円
譲渡所得 = 1億 −(7,500万+375.8万)2,124.2万円
譲渡所得税(長期 20.315%)▲431.5万円
★ 手取り額約4,192万円(売却価格の41.9%)

「平均的な一棟アパートを10年保有して売却」した場合の標準的なケースです。譲渡所得税の負担が長期譲渡の優遇税率(20.315%)に収まることで、ローン完済後も売却価格の4割超 が現金として残ります。

ケースB:1億円・短期譲渡(所有4年)・残債5,000万円

項目金額
売却価格1.0億円
ローン残債▲5,000万円
諸費用合計(税込・Aと同じ)▲375.8万円
譲渡所得 = 1億 −(7,500万+375.8万)2,124.2万円
譲渡所得税(短期 39.63%▲841.8万円
★ 手取り額約3,782万円
ケースAとの差額▲約410万円

ケースAと 諸費用は全く同じ にもかかわらず、所有期間の判定が「売却年1月1日時点で5年以下」 という1点だけで、約410万円 手取りが減ります。

譲渡日の判定は 原則「引渡し日」(契約日ではない)です。12月に契約しても、引渡しが翌年1月にずれ込めば年が変わり、所有期間カウントも変動します。売却スケジュールを組む際の最重要論点 ですので、「一棟アパート売却の税金」の「年またぎ注意」セクション で詳細をご確認ください。

ケースC:1億円・長期譲渡・ローン完済・取得費6,000万円

項目金額
売却価格1.0億円
ローン残債0円
仲介手数料(税込・上限)▲336.6万円
印紙税▲6万円
抵当権抹消(必要な場合のみ)▲0.2万円
その他諸経費(税込)▲30万円
諸費用合計▲372.8万円
取得費(簿価・減価償却がさらに進行)6,000万円
譲渡所得 = 1億 −(6,000万+372.8万)3,627.2万円
譲渡所得税(長期 20.315%)▲736.9万円
★ 手取り額約8,890万円(売却価格の88.9%)

ローン完済済みの物件では、売却代金から残債が引かれない ため手取り率が一気に上がります。一方で、保有期間が長くなった分 減価償却が進んで簿価が下がっている ので、譲渡所得(売却益)は膨らみやすく、譲渡所得税はケースAより 約305万円 増えています(432万円→737万円)。

それでも残債ゼロの効果が圧倒的で、売却価格の約89%が手取り になるのが、長期保有完済物件のメリットです。

ケースD:5,000万円帯・長期譲渡・残債2,500万円(所有8年)

3ケースは「1億円帯」を共通条件にしてきましたが、弊社の取扱範囲(首都圏一棟物件 5,000万〜3億円帯) では、価格帯によって手取りインパクトも変わってきます。代表的な2帯のモデルケースも見てみましょう。

項目金額
売却価格5,000万円
ローン残債▲2,500万円
仲介手数料(税込・上限)▲171.6万円
印紙税▲1万円
抵当権抹消(2件)▲0.2万円
繰上返済手数料▲3万円
その他諸経費(税込)▲15.5万円
諸費用合計▲191.3万円
取得費(簿価・減価償却後)3,750万円
譲渡所得 = 5,000万 −(3,750万+191.3万)1,058.7万円
譲渡所得税(長期 20.315%)▲215.1万円
★ 手取り額約 2,093万円(売却価格の約42%)

売主応援割(0.5%+税)を適用すると: 仲介手数料 171.6万円 → 27.5万円(差 約144万円)、譲渡所得税が約29万円増えるため、税後の手取り改善は約115万円

ケースE:3億円帯・長期譲渡・残債1.5億円(所有12年)

項目金額
売却価格3.0億円
ローン残債▲1.5億円
仲介手数料(税込・上限)▲996.6万円
印紙税(軽減後)▲6万円
抵当権抹消(2件)▲0.2万円
繰上返済手数料▲3万円
その他諸経費(税込)▲62.4万円
諸費用合計▲1,068.2万円
取得費(簿価・減価償却後)2.25億円
譲渡所得 = 3億 −(2.25億+1,068.2万)6,431.8万円
譲渡所得税(長期 20.315%)▲1,306.6万円
★ 手取り額約 1.26億円(売却価格の約42%)

売主応援割を適用すると: 仲介手数料 996.6万円 → 165.0万円(差 約832万円)、譲渡所得税が約169万円増えるため、税後の手取り改善は約663万円

5ケース横断の整理

項目ケースAケースBケースCケースDケースE
売却価格1.0億円1.0億円1.0億円5,000万円3.0億円
所有期間10年(長期)4年(短期)15年(長期)8年(長期)12年(長期)
ローン残債5,000万円5,000万円0円2,500万円1.5億円
譲渡所得税431.5万円841.8万円736.9万円215.1万円1,306.6万円
手取り額4,192万円3,782万円8,890万円2,093万円1.26億円
売却価格比41.9%37.8%88.9%41.9%42.1%
売主応援割の税後改善約224万円約170万円約224万円約115万円約663万円

手取りを動かす最大要因は「残債の有無」(ケースA→C比較で約4,698万円差)、次に「所有期間(短期/長期)」(A→B比較で約410万円差)、その次が「取得費(簿価)の大きさ」という構造が読み取れます。

5,000万円帯・1億円帯・3億円帯のいずれも、ローン残債を売却価格の50%程度抱える長期譲渡では、手取り率は売却価格の約42%前後に収束 する傾向があります。一方、売主応援割による税後改善幅は、価格帯にほぼ比例して大きくなる のがポイントです(5,000万円帯で約115万円、1億円帯で約224万円、3億円帯で約663万円)。

※すべてモデルケースであり、個別の物件・売主・税務状況によって結果は変動します。具体的な税額・税務判断は必ず顧問税理士にご相談ください


仲介手数料の差は、税後でも手取りを大きく動かす

ここまでで「手取りを左右する最大要因は残債と所有期間」とお伝えしました。一方で、売主が自分で動かせる数少ない要素 が、仲介手数料の選び方 です。

宅建業法の上限「売買代金×3%+6万円+消費税」を満額支払うか、弊社のような 売却専用の割引体系 を利用するかで、税後の手取り額は 数十万〜数百万円規模 で変わります。

▼ 結論:「税後で何百万残るか」だけ見れば仲介手数料の本当のインパクトがわかる。割引%ではなく現金で比較する

F2:5価格帯×長期/短期マトリクス(税後手残り増額)

売却価格上限手数料(税込)アークリブ仲介(税込)税後手残り増額(長期20.315%)税後手残り増額(短期39.63%)
5,000万円171.6万円27.5万円約 114.8万円約 86.9万円
1億円336.6万円55.0万円約 224.4万円約 170.0万円
1.2億円402.6万円66.0万円約 268.2万円約 203.2万円
2億円666.6万円110.0万円約 443.5万円約 335.9万円
3億円996.6万円165.0万円約 662.6万円約 501.7万円

※モデルケース。①長期譲渡(20.315%)または短期譲渡(39.63%)で譲渡益ありの個人売主前提 ②売主応援割は売却専任媒介契約の場合の概算 ③税後手残り増額=(上限手数料−アークリブ仲介)×(1−税率) で算出 ④譲渡損が出るケース、損益通算が絡むケース、法人売主、課税事業者の建物部分には別途の調整が必要です。

売却価格が1億円なら税後で約224万円、3億円なら税後で約663万円。「税後の手元残り」で見て初めて、仲介手数料の本当のインパクトがわかります。 弊社では 電話営業を行わない方針 で、無料査定をご依頼いただいた後は原則として翌営業日中にご連絡しています。具体的な税後手取りシミュレーションは 一棟収益物件 無料査定サービス(satei.arklib.co.jp) からどうぞ。

なぜ「税後」で見ると改善幅が小さくなるのか

仲介手数料は税法上 「譲渡費用」 として扱われ、譲渡所得の計算式から差し引かれます(出典:国税庁タックスアンサーNo.3255「譲渡費用となるもの」)。

仲介手数料が下がる → 譲渡費用が下がる → 譲渡所得(売却益)が増える → 譲渡所得税も増える、という 連動関係 があります。

具体的な計算で確認してみましょう。

項目上限手数料パターン売主応援割パターン
売却価格1.0億円1.0億円
仲介手数料(税込・譲渡費用に算入)336.6万円55.0万円
譲渡費用全体375.8万円94.2万円
譲渡所得 = 1億 −(7,500万+譲渡費用)2,124.2万円2,405.8万円
譲渡所得税(長期 20.315%)431.5万円488.7万円
税前の手数料差-▲281.6万円
税後の譲渡所得税増分-+57.2万円
★ 税後の手取り改善-約224.4万円

つまり、手数料を281.6万円下げると、税金が57.2万円増える代わりに、ネットで約224.4万円が手元に多く残る という構造です。「節約した手数料が丸ごと手取り増にはならないが、それでも数百万円規模の改善になる」のがリアルなインパクトです。

※上記はすべてモデルケースであり、実際の税後改善幅は個別の物件・売主・税務状況で変動します。具体的な税額・税務判断は顧問税理士にご相談ください。

ケースA に売主応援割を適用してみると

ケースA(手取り4,192万円)に、売主応援割を適用すると:

  • 仲介手数料:336.6万円 → 55.0万円(▲281.6万円)
  • 譲渡所得税:431.5万円 → 488.7万円(+57.2万円)
  • ★ 手取り額:4,192万円 → 約4,417万円+約224万円

ローン残債5,000万円を抱えた状態でも、手数料の選び方だけで200万円超 が現金として上乗せされます。


売却価格500万円差が、税後手取りに与える影響

「売却価格が500万円高くなったら、手取りも500万円増える?」——答えは NO です。売却価格が増えると 譲渡所得も同じだけ増え、譲渡所得税も増える ため、手取りに上乗せされるのは差額の 約8割 にとどまります。

▼ 結論:売却価格の上振れは、手取りに80%しか反映されない。だが100万円の差でも数十万円の手取りに直結

【図F5:売却価格500万円差が、税後手取りに与える影響】(既存・維持)

売却価格の変化税後手取り基準との差
❌ ▲500万円3,793万円▲399万円
→ 基準4,192万円±0万円
✅ +500万円4,591万円+399万円

→ 差額の約80%が手取りに反映。残りの約20%は譲渡所得税の増分として差し引かれるモデルです。※長期譲渡・譲渡益ありのモデルケースです。実際の手取り変動は取得費、残債、諸費用、税務条件により変わります。

査定額アップに「複数社査定」が効く理由

売却価格の数百万円差は、手取りに直接的にインパクトを与えます。査定額は、不動産会社の経験・販路・販売戦略によって大きくばらつくため、複数社に査定を依頼するだけで、数百万円〜数千万円の差 が見えることが珍しくありません。

弊社のこれまでの取扱範囲では、首都圏一棟物件の査定で 会社間で5〜10%の幅 が出るケースが一般的でした。1億円の物件なら500万〜1,000万円の開きです。

【今すぐできる行動:無料査定で売却価格の中央値を見極める】 アークリブの一棟収益物件 無料査定サービスでは、過去取引データと現況の市場動向を踏まえた査定額をご提示します。他社の査定額と比較いただくことで、適正売却価格の中央値を見つけやすくなります。電話営業は行いませんので、まずは情報収集としてのご利用も歓迎です。


手取り計算で見落としやすい注意点

注意点を整理する前に、売却決済から納税完了までの「資金が動くタイミング」 を時系列で確認しておきましょう。手取り計算は「決済日の一発勝負」ではなく、翌年の確定申告まで含めた1年がかりの資金フロー だからです。

▼ 結論:決済日と確定申告(翌年2-3月)の間に12ヶ月のラグ。納税資金は手取りから別口座に確保しておく

売却決済から納税完了までの資金タイムライン(モデルケース)
前提:売却価格1億円・残債5,000万円・諸費用約376万円・譲渡所得税約432万円(ケースA想定)
STEP 1
決済日(X日)
イベント
売買代金受領 + 残債一括返済 + 諸費用精算
IN
売買代金 +1億円

OUT
残債返済 ▲5,000万円
仲介手数料 ▲337万円
印紙税 ▲6万円
繰上返済手数料 ▲3万円
抵当権抹消費用 ▲0.2万円
残高(仮置き)
約4,654万円
注記:残債は決済日に一括返済が原則。抵当権抹消登記の完了は1〜2週後。
STEP 2
決済から1〜2週後
イベント
抵当権抹消登記完了
IN/OUT
なし(資金移動なし)
注記:司法書士から登記完了書類が届く。
STEP 3
翌年 2/16〜3/15
イベント
譲渡所得の確定申告
OUT
譲渡所得税 ▲約432万円(長期20.315%・ケースA)
残高
約4,222万円
注記:申告期限を過ぎると延滞税が発生。
STEP 4
翌年 6月
イベント
住民税の課税通知
OUT
追加発生なし(住民税5%は税率に含まれる)
注記:長期20.315%には所得税15.315%+住民税5%が含まれる。住民税分は翌年度の住民税計算に組み込まれる。
STEP 5
翌々年〜
イベント
再投資・繰上返済・相続対策の判断
IN/OUT
自己選択(投資/返済/承継)
注記:次の投資余力の目安=この時点の残高を自己資金とし、LTV70%想定なら「残高÷0.3(約3.3倍)」で概算。
※モデルケース。実際の手取り・税務処理は個別条件で変動
※具体的な確定申告・税務判断は顧問税理士にご相談ください

特に重要なのは STEP 1の決済日とSTEP 3の確定申告(翌年2/16〜3/15)の間に約12ヶ月のラグがある こと。決済時に手取りを全額再投資・住宅ローン繰上返済に回してしまうと、翌年の納税資金が不足する事故につながります。ケースAなら譲渡所得税約432万円を「納税専用口座」に分けておく のが安全です。

① 譲渡所得税の確定申告と納税資金

譲渡所得が出た場合、または 特例適用(買換え特例・3,000万円控除等) を受ける場合は、売却翌年の2月16日〜3月15日 に確定申告が必要です。

譲渡所得税は決済時に天引きされないため、手取りから別途確保して納税 する必要があります。ケースAなら譲渡所得税431.5万円、ケースBなら841.8万円。手取り額をそのまま全額再投資・住宅資金に回さず、納税資金を別口座に分けておく のがおすすめです。

② 繰上返済手数料

ローン残債を売却時に一括返済すると、金融機関によっては 繰上返済手数料 が発生します。

  • 都市銀行:1〜3万円程度
  • 地方銀行・信用金庫:0円〜数万円
  • 一部のノンバンク:残債の0.5〜2%

決済日の数か月前に金融機関の担当者へ問い合わせて、正確な金額を確認 しておきましょう。

③ 消費税の課税対象判定(課税事業者・建物部分・土地建物按分)

売主が 個人 であっても、収益物件の売却では 消費税の論点 が発生する場合があります。判定の3要素は次の通り:

  • 課税事業者かどうか:基準期間(前々年)の課税売上が1,000万円超
  • 建物部分:土地は非課税、建物は課税対象
  • 土地建物按分:売買契約書での金額按分、または固定資産税評価額按分

法人売主の場合は原則として消費税課税対象 となり、建物価格×10%が買主から預かる形で受領され、後日納税します。複雑な論点ですので、売却契約前に必ず顧問税理士・会計士に確認 してください。

④ オーバーローン時の対応

ローン残債 > 売却価格の状態(オーバーローン)では、売却代金だけでは残債を完済できず、自己資金補填または任意売却の検討 が必要です。

  • 自己資金補填:差額を売主が用意して残債完済→通常売却
  • 任意売却:金融機関の同意を得て売却価格と返済条件を協議

任意売却は 金融機関の判断・残債処理・売主の信用情報 が絡む専門領域です。具体的な対応は投資相談または取引先金融機関へ。


手取り額がそのまま「次の投資余力」になる:再投資・繰上返済・相続対策の3選択肢

ここまでの計算で「自分の物件で手取り額がいくらになるか」のイメージは掴めたかと思います。手取り額の使い道を売却前から想定しておくと、出口戦略全体の意思決定がより明確になります。代表的な3つの選択肢を見ていきましょう。

選択肢①:次の物件への再投資(レバレッジ最大化)

【数式カード】 - 手取り額 × 自己資金比率(30%目安・LTV70%借入)= 次の物件取得余力 - 例:手取り 4,200万円 → 自己資金30%の前提で 約1.4億円規模の物件取得が可能

長期保有で減価償却が進んだ古い物件を出口処理し、手取りを自己資金に転換して新規物件を取得 することで、再度「減価償却による課税繰延+評価圧縮」のサイクルに入れます。法人税対策・相続対策の継続性を維持できる選択肢です。

選択肢②:保有物件の繰上返済(キャッシュフロー改善)

【数式カード】 - 1,000万円繰上返済 → 残期間25年・金利2.55%なら 年間返済が約44万円減少 - 月額CF +3.7万円、税引前CF年間+44万円(25年間累計 約1,100万円)

複数物件を保有している場合、キャッシュフローが弱い物件への繰上返済で全体のDSCRを改善 する選択肢です。金利上昇局面では特に効果が大きく、保有継続のリスクヘッジとして有効です。

選択肢③:相続対策・事業承継の原資(評価圧縮の再構築)

【数式カード】 - 手取り現金そのままなら相続税評価100% - 同額を収益物件に組み替えると評価圧縮 約30〜50% が一般的(路線価・固定資産税評価・借家権・小規模宅地特例の重ね適用次第)

「現金で持つよりも不動産で承継する方が評価圧縮で有利」というのは 相続対策の代表的な選択肢のひとつ です。手取り額を一旦現金化した後、より評価圧縮効果が見込める物件への組み替えを検討する ことで、相続対策を継続できる可能性があります。詳細は顧問税理士と専門家チームでご検討ください。


よくあるご質問(Q&A)

Q1:ローン残債が売却価格を超える「オーバーローン」の場合、どうすればよい?

A:選択肢は2つあります。①売却代金と自己資金を合わせて残債完済→通常売却(抵当権抹消が可能なら登記移転OK)、②金融機関の同意を得て任意売却を検討。任意売却は金融機関ごとに対応条件が異なるため、まずは取引先金融機関の担当者または弊社の個別相談で具体的な進め方をご確認ください

Q2:購入時の領収書がなく、取得費が分からない場合は?

A:購入時の 売買契約書・登記費用領収書・購入時仲介手数料領収書 が見つからない場合、「概算取得費=売却価格の5%」 で計算する選択肢があります(国税庁タックスアンサーNo.3258)。ただし実額の方が有利なケースが多いため、まずは購入当時の金融機関融資資料、税理士・会計士の過年度確定申告書類、不動産会社の取引記録から復元を試みるのがおすすめです。5%概算取得費の落とし穴 については 「一棟アパート売却の税金」の「5%概算取得費」セクション で詳述しています。

Q3:共有名義の物件の手取り計算は?

A:共有持分割合 に応じて売却代金・諸費用・譲渡所得税が按分されます。例えば夫婦各1/2共有なら、それぞれが「売却価格の1/2」「諸費用の1/2」「譲渡所得の1/2」を申告。確定申告も 各共有者が個別に提出 する必要があります。住宅ローン控除や3,000万円控除(居住用のみ)の適用判定も共有持分ごとに変わるため、税務処理は顧問税理士にご相談ください。

Q4:売主応援割(0.5%+消費税)の適用条件は?

A:弊社の売主応援割は、売却専任媒介契約(または専属専任媒介契約)をお預けいただいた場合に適用される割引体系です。一般媒介契約や買主側の仲介には適用されません。詳細条件は一棟収益物件 無料査定サービスからお問い合わせください。

Q5:手取りから納税資金をどれくらい確保しておくべき?

A:譲渡所得税の額は 譲渡所得 × 税率 で概算できます。ケースAなら手取り4,192万円のうち、譲渡所得税431.5万円が売却翌年の2/16〜3/15に納税 タイミング。手取りから431.5万円を「納税用」として別口座に分けておく のが安全です。住民税は翌年6月から特別徴収または普通徴収で課税されます。ケースごとの具体的な納税額・タイミングは、必ず顧問税理士にご相談ください


まとめ

収益物件売却の 手取り計算 を、5つのポイントに整理します。

  • 手取り=売却価格 − 残債 − 諸費用 − 譲渡所得税。売却価格と手取りは別物
  • 手取りを動かす最大要因は「残債の有無」。同じ1億円売却でも残債5,000万円と完済で手取りは約4,700万円差
  • 諸費用は税込で見る。仲介手数料・繰上返済手数料・測量費等の現金支出は税込で発生
  • 仲介手数料の差は税後でも手取りを動かす。1億円売却なら税後で約224万円、3億円なら約663万円の改善が見込める
  • シミュレーション前に4つの数字を揃える:①売却価格 ②ローン残債 ③取得費(簿価) ④所有期間。これだけで自分の数字に置き換えられる

ここまでお伝えした内容はすべて モデルケース であり、個別の物件・売主・税務状況によって結果は変動します。具体的な税額・税務判断は必ず顧問税理士にご相談ください

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弊社の特長:

  • 売主応援割 で、一般的な上限手数料と比較して 税後でも数十万〜数百万円の手取り改善
  • 電話営業を行わない方針:無料査定後は原則として翌営業日中にメールまたはお電話でご連絡
  • 首都圏一棟物件 5,000万〜3億円帯 の取扱実績に基づいた、現実的な価格感のご提示

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【重要】 本記事の内容は2026年5月時点の制度・市場情報に基づくモデルケースです。税率・上限・特例の適用条件は税制改正で変動します。実際の手取り計算・税務判断は、必ず顧問税理士・税理士法人に個別にご相談ください。


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