空室がある一棟アパートは売れる?売却前にやるべきこと【2026年版】
この記事のポイント
- 空室があっても売却可能:ただし収益還元法で査定額に直接反映、買主の指値・融資審査にも影響
- 査定額への影響大:10室・家賃6万円の物件で満室と空室率30%なら査定額に約2,300万円の差
- 売却前の5対策:入居付け・家賃相場見直し・清掃/簡易リフォーム・レントロール整備・空室原因分析
- 判断基準:エリア需要減退/大規模修繕前は現状売却、家賃調整で埋まる/30%超の空室は埋めてから売却
「空室が複数あるけれど、この状態で売れるのだろうか?」——一棟アパートの売却を検討するオーナー様にとって、空室の存在は最大の不安材料の一つです。結論から言えば、空室がある状態でも一棟アパートは売却できます。ただし、空室率が売却価格や買主の印象に与える影響は無視できません。本記事では、空室がある一棟アパートの売却で知っておくべき価格への影響、売却前にやるべき対策、空室のまま売るべきケースと埋めてから売るべきケースの判断基準を解説します。
空室がある状態でも一棟アパートは売れるのか?
結論:売れる。ただし条件次第
空室がある一棟アパートでも売却は可能です。むしろ投資家にとっては「空室=値引き交渉の材料」であると同時に「空室=自分で入居者を付けて利回りを上げるチャンス」でもあります。
重要なのは「空室がある=売れない」ではなく、空室率が査定額・売却価格・買主の購入意欲にどう影響するかを正しく理解することです。
空室率と売却価格の関係
収益還元法で査定する場合、空室は年間純収益(NOI)を直接引き下げるため、査定額にダイレクトに影響します。
| 空室率 | 年間家賃収入(10室・家賃6万円/室の場合) | NOI(経費率25%想定) | 還元利回り7%での査定額 |
|---|---|---|---|
| 0%(満室) | 720万円 | 540万円 | 約7,714万円 |
| 10%(1室空き) | 648万円 | 486万円 | 約6,943万円 |
| 20%(2室空き) | 576万円 | 432万円 | 約6,171万円 |
| 30%(3室空き) | 504万円 | 378万円 | 約5,400万円 |
満室と空室率30%では、査定額に約2,300万円の差が出ます。
※NOI=年間家賃収入から運営費を引いた純収益。NOI÷還元利回り=収益還元法による評価額の目安です。
満室と空室率30%の差:約2,300万円(約3割減)
満室 約7,714万円 → 空室率30% 約5,400万円
※経費率・還元利回りは物件・エリアにより変動します。
空室があるとなぜ売却価格が下がる?3つの理由
理由① 収益還元法の査定で不利になる
前述のとおり、空室は年間純収益を直接減らすため、収益還元法での査定額が下がります。これは最もインパクトの大きい要因です。
理由② 買主が「指値」を入れやすくなる
空室があると、買主は「空室を埋めるコスト」「家賃が下がるリスク」を理由に指値(値下げ要求)を入れてきます。空室率が高いほど、買主の交渉力が強くなる傾向があります。
理由③ 金融機関の融資審査が厳しくなる
買主がローンを組む場合、金融機関は物件の収益性を審査します。空室が多いと融資額が減額されたり、審査が通りにくくなるケースがあり、結果として購入希望者の母数が減ります。
売却前にやるべきことは?5つの対策
空室がある状態で少しでも有利に売却するための具体的な対策をご紹介します。
① 空室をできる限り埋めてから売却する
当然ですが、満室に近い状態で売却する方が査定額は高くなります。ただし、入居者を付けるための費用(広告費・フリーレント・リフォーム費用)と、それによる査定額の上昇を比較して「ペイするか」を判断する必要があります。
ペイする目安:
- 空室1室の家賃6万円/月 → 年間72万円の収入増(運営費を引いたNOIは約54万円)
- 還元利回り7%で計算 → 査定額が約771万円アップ
- 入居付けコスト(広告費・原状回復 等)がこれを下回ればペイしやすい目安
※数値は概算。フリーレントや空室期間中の機会損失も加味して総合判断を。
② 家賃を相場に合わせて見直す
長期間空室が続いている場合、家賃が相場より高すぎる可能性があります。周辺の類似物件の家賃を調査し、必要に応じて家賃を下げることで入居付けが進み、売却時の査定額向上に繋がります。
③ 共用部・外観の清掃と簡易リフォーム
内見時の第一印象は買主の購入意欲に大きく影響します。大規模修繕は不要ですが、以下のような簡易対策は費用対効果が高いです:
- エントランス・廊下・階段の清掃
- ゴミ置き場の整理
- 外壁の部分補修(目立つ汚れ・ひび割れ)
- 共用灯の球切れ交換
- 空室の原状回復(壁紙・クリーニング)
④ レントロール(賃貸借一覧)を正確に整備する
買主が最も重視する資料の一つがレントロール(各室の入居状況・家賃・契約期間一覧)です。空室がある場合は特に、以下を正確に記載しましょう:
- 各室の現在の入居状況(入居中/空室)
- 各室の現行家賃と共益費
- 契約開始日・更新月
- 敷金・礼金の預かり状況
- 空室期間と過去の入居実績
⑤ 空室の原因を分析し、改善できる点は改善する
空室の原因が設備の老朽化(エアコン・給湯器・水回り)なら、最低限の設備更新で入居付けが進む可能性があります。一方、立地や需給バランスの問題であれば、設備投資しても効果が薄いため、現状のまま売却する判断も合理的です。
空室のまま売る?埋めてから売る?判断の目安
空室物件の売却で注意すべき点は?
入居者を無理に付けない
売却のために審査を甘くして入居者を付けるのは逆効果です。家賃滞納リスクのある入居者がいると、むしろ買主から敬遠され、売却が困難になります。
サブリース(家賃保証)での空室対策は慎重に
売却前にサブリース契約を結んで「満室に見せる」手法は、買主に不信感を与えるリスクがあります。特に、サブリース契約は売却後も買主に引き継がれる場合があり、買主にとって不利な条件が含まれていると売却自体が難航します。サブリース契約中の物件で空室が問題になるケースは少ないですが、売却時にはサブリースの扱いが重要になります。「サブリース契約中の一棟物件は売却できる?」もご参照ください。
空室原因の開示は誠実に
空室の理由を隠したり曖昧にすると、買主や仲介会社の信頼を失います。「設備の老朽化で退去した」「周辺に新築競合が建った」など、正直に開示する方が結果的にスムーズな売却に繋がります。
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※本記事は2026年4月時点の不動産実務に基づいて作成しています。空室対策や査定額は物件・エリア・市況によって変動しますので、実際の判断にあたっては不動産会社にご相談ください。