築古の一棟アパートは売却できる?築20年・30年・40年の3つの売り方と価格戦略【2026年版】
「築30年を超えた一棟アパート、売れるのだろうか?」「建物の価値がゼロと言われたが、解体すべきか?」——築古の一棟収益物件を保有するオーナー様から、こうした相談を多くいただきます。木造アパートの法定耐用年数は22年、築22年を超えると建物の評価はゼロとなり、買主が住宅ローンを組むことも難しくなります。それでも、築古アパートは適切な戦略を選べば確実に売却できます。本記事では、築年数別の市場の実態と、「現状売却」「リノベ後売却」「解体して土地売却」の3つの戦略を、具体的な数字とシミュレーションで比較解説します。
築古アパートの「築年数別」市場の実態
築年数による評価と売却難易度
| 築年数 | 建物評価 | 主な買主 | 融資のつきやすさ | 売却難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 〜築15年 | 残存価値あり | 一般投資家 | 通常融資可 | 普通 |
| 築15〜22年 | 評価減大 | 投資家+一部業者 | 短期融資(10年程度) | やや難 |
| 築22〜30年 | 建物評価ゼロ | 高利回り狙いの投資家 | プロパー融資のみ | 難 |
| 築30〜40年 | 土地値中心 | 業者・買取再販 | ほぼ現金買い | かなり難 |
| 築40年以上 | 解体前提も | 業者・建替え目的 | 現金買い | 非常に難 |
なぜ築古は売りにくいのか — 3つの構造的問題
問題① 融資期間が短くなる
金融機関の融資期間は「法定耐用年数 − 経過年数」で算出されるのが原則です。
| 物件種別 | 法定耐用年数 | 築20年時の融資期間 | 築30年時の融資期間 |
|---|---|---|---|
| 木造アパート | 22年 | 残2年(実質困難) | 0年(融資不可) |
| 軽量鉄骨造 | 27年 | 残7年 | 0年(融資不可) |
| RC造マンション | 47年 | 残27年 | 残17年 |
買主が長期ローンを組めないと、月々のCFが回らず購入を見送るケースが大半です。
問題② 修繕リスクが顕在化している
築20年を超えると、外壁・屋根・給排水管・受水槽などの大規模修繕が一斉に必要になる時期に入ります。買主は「購入後すぐに数百万円の修繕が発生する」と見積もり、その分を指値(値引き要求)に反映させます。
問題③ 建物の帳簿価値がゼロに近い
減価償却が終了すると建物の簿価はほぼゼロ(取得価額の5%が残存)。売却時に譲渡所得が膨らみ、税金が高額になります。詳しくは「収益物件の減価償却が終わったら売却すべき?」で解説しています。
戦略①|「現状のまま」売却する
どんなケースに向いているか
- 入居率が比較的高い(70%以上)
- 大規模修繕直後である
- 立地が良く、土地値が高い
- できるだけ早く現金化したい
メリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 売却までの時間が短い(3〜6ヶ月) | 価格が低くなりやすい |
| 追加投資が不要 | 買主が限定される |
| ランニングコストの早期解消 | 指値の幅が大きい |
価格シミュレーション:築30年木造アパート(土地300㎡・建物10室)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 土地値(路線価8万円/㎡×300㎡÷0.8) | 約3,000万円 |
| 建物評価(築30年・木造) | 評価ゼロ |
| 年間家賃収入(現状空室3室含む) | 504万円(家賃6万円×7室) |
| 利回り還元(NOI×経費率25%÷10%) | 約3,780万円 |
| 想定売却価格 | 3,500〜4,000万円 |
築古でも収益性が成り立てばこの水準で売却可能です。一棟物件の売却の流れは「一棟アパート売却の流れを5ステップで解説」をご参照ください。
戦略②|リフォーム・リノベ後に売却する
どんなケースに向いているか
- 入居率が低い(50%未満)
- 内装の傷みが激しい
- 立地が良く、家賃アップの余地がある
- 売却を急がない(半年以上の余裕がある)
投資対効果のシミュレーション
| 項目 | 現状売却 | リノベ後売却 |
|---|---|---|
| 入居率 | 50%(5室空室) | 90%(1室空室) |
| 年間家賃収入 | 360万円 | 648万円(家賃7,000円アップ含む) |
| NOI(経費率25%) | 270万円 | 486万円 |
| 還元利回り10%での査定額 | 2,700万円 | 4,860万円 |
| リノベ費用(5室×80万円) | — | ▲400万円 |
| 手取り(差額) | 2,700万円 | 4,460万円 |
リノベ400万円の投資で、手取り額が約1,760万円アップする試算です。ただし、効果が出るためには以下の条件が重要です。
- 立地が良く、家賃アップの需要がある
- リノベがコストパフォーマンスの高い範囲に収まる(フルリノベは過剰投資)
- リノベ後に入居付けまでセットで対応できる
費用対効果の判断は、複数の業者の見積もりを取った上で、想定家賃と空室期間を試算することが重要です。
戦略③|解体して土地として売却する
どんなケースに向いているか
- 建物が老朽化し、修繕すると採算が合わない
- 入居者がほぼ退去している(退去交渉が容易)
- 土地値が高いエリア(都心・駅近)
- 買主層を「建売業者・戸建て購入者」にも広げたい
解体・更地化の費用と注意点
| 項目 | 概算費用 |
|---|---|
| 解体費用(木造10室・延床150㎡) | 200〜300万円 |
| 入居者の立ち退き料 | 1室あたり50〜100万円 |
| アスベスト調査・処理 | 10〜50万円 |
| 整地費用 | 30〜80万円 |
| 合計 | 400〜800万円 |
重要な注意点:固定資産税
更地にすると、土地の固定資産税の「住宅用地の特例」が外れ、税額が3〜6倍に跳ね上がります。売却まで長期化すると保有コストが急増するため、解体は売主決定後・引渡し前に行うのが鉄則です。
価格比較シミュレーション
| 現状売却 | 解体後・更地売却 | |
|---|---|---|
| 売却価格 | 3,500万円 | 4,500万円 |
| 解体費用 | 0 | ▲300万円 |
| 立ち退き料 | 0 | ▲400万円(4室分) |
| 仲介手数料等 | ▲120万円 | ▲145万円 |
| 手取り | 3,380万円 | 3,655万円 |
更地売却の方が手取りで約275万円多い計算になります。ただし、立ち退き交渉や解体の手間・時間(6ヶ月〜1年)も考慮が必要です。
どの戦略を選ぶべきか — 判断フローチャート
| 判定基準 | 推奨戦略 |
|---|---|
| 入居率70%以上+土地値そこそこ | 現状売却 |
| 入居率50%以下+立地良+家賃UP余地 | リノベ後売却 |
| 入居率50%以下+立地良+土地値高 | 解体・更地売却 |
| 急いで現金化したい | 買取再販業者へ売却 |
買取再販業者という選択肢
仲介で買主が見つからない場合、買取再販業者への売却も選択肢です。
| 項目 | 仲介売却 | 買取再販 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格 | 市場価格の70〜80% |
| 売却期間 | 3〜12ヶ月 | 最短2週間 |
| 仲介手数料 | 3%+6万円 | 不要 |
| 瑕疵担保責任 | あり | 免責が多い |
築古物件で売れにくい場合、買取再販を視野に入れるのが現実的です。詳しくは「一棟収益物件の売却で失敗しない不動産会社の選び方」もご参照ください。
築古アパート売却で必ず押さえておくべき税金のポイント
建物簿価がほぼゼロ→譲渡所得が膨らむ
築古物件は減価償却が完了しているため、売却益(譲渡所得)が想定以上に大きくなります。
例:購入価格5,000万円・築30年で売却した場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 4,000万円 |
| 取得費(土地3,000万円+建物簿価100万円) | 3,100万円 |
| 譲渡費用(仲介手数料等) | 約140万円 |
| 譲渡所得 | 760万円 |
| 長期譲渡所得税(20.315%) | 約154万円 |
「売却損が出ているはず」と思っても、税金上は760万円の利益が出ている扱いになります。詳細は「一棟アパート売却にかかる税金と計算方法」で解説しています。
法人所有の場合
法人所有なら、本業利益との損益通算が可能です。本業が赤字の年に売却すれば、法人税負担を大きく軽減できます。「法人所有の収益物件を売却するベストタイミングは?」もあわせてご覧ください。
自分でシミュレーションする
複雑な税金計算と30年CF・IRR・DSCRをまとめて試算できる無料ツール「事業計画シミュレーター」もぜひご活用ください。築古物件の売却タイミング判断に役立ちます。
まとめ|築古でも諦めず、戦略で売る
| 戦略 | 期間 | 推奨ケース | 想定手取り例 |
|---|---|---|---|
| 現状売却 | 3〜6ヶ月 | 入居率高・土地値そこそこ | 3,380万円 |
| リノベ後売却 | 6〜12ヶ月 | 入居率低・立地良・家賃UP余地あり | 4,460万円 |
| 解体・更地売却 | 12〜18ヶ月 | 立地良・土地値高 | 3,655万円 |
| 買取再販 | 1〜2ヶ月 | 急いで現金化したい | 市場価格の70〜80% |
築古アパートは「売れない」のではなく「売り方を選ぶ必要がある」物件です。物件の立地・状態・売却を急ぐかどうかによって最適な戦略は変わります。まずは現在の資産価値を正確に把握するところから始めてみてください。
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