築古の一棟アパートは売却できる?築20年・30年・40年の3つの売り方と価格戦略【2026年版】

築古一棟アパート売却の3戦略を分岐矢印で示したインフォグラフィック(現状売却・リノベ後売却・解体更地売却)
INDEX目次

この記事のポイント

  • 築古でも売却可能。法定耐用年数(木造22年・RC 47年)超過で融資期間が短くなり買主が限定
  • 3戦略:現状売却(3~6か月)/リノベ後売却(6~12か月)/解体更地売却(12~18か月)
  • リノベ投資効果例:400万円投資で家賃UP+空室解消→手取り+1,760万円の試算
  • 更地化の落とし穴:固定資産税が3~6倍に跳ね上がる→解体は買主決定後・引渡し前が鉄則

 

「築30年を超えた一棟アパート、売れるのだろうか?」「建物の価値がゼロと言われたが、解体すべきか?」——築古の一棟収益物件を保有するオーナー様から、こうした相談を多くいただきます。木造アパートの法定耐用年数は22年、築22年を超えると建物の評価はゼロとなり、買主が住宅ローンを組むことも難しくなります。それでも、築古アパートは適切な戦略を選べば売却の道は十分にあります。本記事では、築年数別の市場の実態と、「現状売却」「リノベ後売却」「解体して土地売却」の3つの戦略を、具体的な数字とシミュレーションで比較解説します。

築古アパートの「築年数別」市場の実態

築年数による評価と売却難易度

築年数建物評価主な買主融資のつきやすさ売却難易度
〜築15年残存価値あり一般投資家通常融資可普通
築15〜22年評価減大投資家+一部業者短期融資(10年程度)やや難
築22〜30年建物評価ゼロ高利回り狙いの投資家プロパー融資のみ
築30〜40年土地値中心業者・買取再販ほぼ現金買いかなり難
築40年以上解体前提も業者・建替え目的現金買い非常に難

なぜ築古は売りにくいのか — 3つの構造的問題

問題① 融資期間が短くなる

金融機関の融資期間は「法定耐用年数 − 経過年数」で算出されるのが原則です。

物件種別法定耐用年数築20年時の融資期間築30年時の融資期間
木造アパート22年残2年(実質困難)0年(長期融資は困難)
軽量鉄骨造27年残7年0年(長期融資は困難)
RC造マンション47年残27年残17年

買主が長期ローンを組めないと(プロパー融資等の例外はありますが)、月々のCFが回らず購入を見送るケースが大半です。

問題② 修繕リスクが顕在化している

築20年を超えると、外壁・屋根・給排水管・受水槽などの大規模修繕が一斉に必要になる時期に入ります。買主は「購入後すぐに数百万円の修繕が発生する」と見積もり、その分を指値(値引き要求)に反映させます。

問題③ 建物の帳簿価値がゼロに近い

減価償却が終了すると建物の簿価はほぼゼロ(取得価額の5%が残存)。売却時に譲渡所得が膨らみ、税金が高額になります。詳しくは「収益物件の減価償却が終わったら売却すべき?」で解説しています。

戦略①|「現状のまま」売却する

どんなケースに向いているか

  • 入居率が比較的高い(70%以上)
  • 大規模修繕直後である
  • 立地が良く、土地値が高い
  • できるだけ早く現金化したい

メリットとデメリット

メリットデメリット
売却までの時間が短い(3〜6ヶ月)価格が低くなりやすい
追加投資が不要買主が限定される
ランニングコストの早期解消指値の幅が大きい

価格シミュレーション:築30年木造アパート(土地300㎡・建物10室)

項目金額
土地値(路線価8万円/㎡×300㎡÷0.8)約3,000万円
建物評価(築30年・木造)評価ゼロ
年間家賃収入(現状空室3室含む)504万円(家賃6万円×7室)
収益還元(家賃504万−経費25%=NOI378万 → ÷還元利回り10%)約3,780万円
想定売却価格3,500〜4,000万円

築古でも収益性が成り立てばこの水準で売却可能です。一棟物件の売却の流れは「一棟アパート売却の流れを5ステップで解説」をご参照ください。

戦略②|リフォーム・リノベ後に売却する

どんなケースに向いているか

  • 入居率が低い(50%未満)
  • 内装の傷みが激しい
  • 立地が良く、家賃アップの余地がある
  • 売却を急がない(半年以上の余裕がある)

投資対効果のシミュレーション

リフォーム/リノベの投資対効果(同一物件の比較例)
現状
リノベ後
差額
現状のまま売却(査定額) 2,700万円
入居率50%・NOI 270万・還元利回り10%

61%
リノベ後に売却(手取り) 4,460万円
入居率90%・NOI 486万・査定4,860万−リノベ費400万

100%
差:リノベ後が約1,760万円多い(投資400万円に対し)
※立地・家賃需要により効果は変動します。一例であり、売却価格を保証するものではありません

リノベ400万円の投資で、手取り額が約1,760万円アップする試算です。ただし、効果が出るためには以下の条件が重要です。

  • 立地が良く、家賃アップの需要がある
  • リノベがコストパフォーマンスの高い範囲に収まる(フルリノベは過剰投資)
  • リノベ後に入居付けまでセットで対応できる

費用対効果の判断は、複数の業者の見積もりを取った上で、想定家賃と空室期間を試算することが重要です。

戦略③|解体して土地として売却する

どんなケースに向いているか

  • 建物が老朽化し、修繕すると採算が合わない
  • 入居者がほぼ退去している(退去交渉が容易)
  • 土地値が高いエリア(都心・駅近)
  • 買主層を「建売業者・戸建て購入者」にも広げたい

解体・更地化の費用と注意点

項目概算費用
解体費用(木造10室・延床150㎡)200〜300万円
入居者の立ち退き料1室あたり50〜100万円
アスベスト調査・処理10〜50万円
整地費用30〜80万円
合計400〜800万円

重要な注意点:固定資産税

更地にすると、土地の固定資産税の「住宅用地の特例」が外れ、税額が3〜6倍に跳ね上がります。売却まで長期化すると保有コストが急増するため、解体は売主決定後・引渡し前に行うのが鉄則です。

価格比較シミュレーション


現状売却解体後・更地売却
売却価格3,500万円4,500万円
解体費用0▲300万円
立ち退き料0▲400万円(4室分)
仲介手数料等▲120万円▲145万円
手取り3,380万円3,655万円

更地売却の方が手取りで約275万円多い計算になります。ただし、立ち退き交渉や解体の手間・時間(6ヶ月〜1年)も考慮が必要です。

どの戦略を選ぶべきか — 判断フローチャート

あなたに合う売り方は?(Yes/No)
Q1
急いで現金化したい?
Yes → 買取再販
No ▼
Q2
入居率は70%以上?(土地値もそこそこ)
Yes → 現状売却
No ▼
Q3
土地値が高いエリア?
Yes → 解体・更地売却
立地の土地評価を活かす
No → リノベ後売却
収益性(家賃・稼働)を立て直す
※目安です。物件の立地・状態・売り急ぎ度で最適策は変わります

買取再販業者という選択肢

仲介で買主が見つからない場合、買取再販業者への売却も選択肢です。

項目仲介売却買取再販
売却価格市場価格市場価格の70〜80%
売却期間3〜12ヶ月最短2週間
仲介手数料3%+6万円不要
契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)あり免責が多い

築古物件で売れにくい場合、買取再販を視野に入れるのが現実的です。詳しくは「一棟収益物件の売却で失敗しない不動産会社の選び方」もご参照ください。

築古アパート売却で必ず押さえておくべき税金のポイント

建物簿価がほぼゼロ→譲渡所得が膨らむ

築古物件は減価償却が完了しているため、売却益(譲渡所得)が想定以上に大きくなります。

例:購入価格5,000万円・築30年で売却した場合

項目金額
売却価格4,000万円
取得費(土地3,000万円+建物簿価100万円)3,100万円
譲渡費用(仲介手数料等)約140万円
譲渡所得760万円
長期譲渡所得税(20.315%)約154万円

「売却損が出ているはず」と思っても、税金上は760万円の利益が出ている扱いになります。詳細は「一棟アパート売却にかかる税金と計算方法」で解説しています。

法人所有の場合

法人所有なら、本業利益との損益通算が可能です。本業が赤字の年に売却すれば、法人税負担を大きく軽減できます。「法人所有の収益物件を売却するベストタイミングは?」もあわせてご覧ください。

自分でシミュレーションする

複雑な税金計算と30年CF・IRR・DSCRをまとめて試算できる無料ツール「事業計画シミュレーター」もぜひご活用ください。築古物件の売却タイミング判断に役立ちます。

まとめ|築古でも諦めず、戦略で売る

築古アパート 売り方4択(期間・向くケース・想定手取り例)
現状売却
期間 3〜6ヶ月
向くケース
入居率高・土地値そこそこ
想定手取り例
約3,380万円
リノベ後売却
期間 6〜12ヶ月
向くケース
入居率低・立地良・家賃UP余地
想定手取り例
約4,460万円
解体・更地売却
期間 12〜18ヶ月
向くケース
立地良・土地値高
想定手取り例
約3,655万円
買取再販
最短 1〜2ヶ月
向くケース
急いで現金化
目安
市場価格の70〜80%
※前提条件の異なる試算例です。査定額・売却価格を保証するものではありません

築古アパートは「売れない」のではなく「売り方を選ぶ必要がある」物件です。物件の立地・状態・売却を急ぐかどうかによって最適な戦略は変わります。まずは現在の資産価値を正確に把握するところから始めてみてください。

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