一棟収益物件の購入諸費用・税金 完全ガイド【2026年版】
この記事のポイント
- 一棟収益物件の購入時にかかる諸費用は、物件価格のおおむね7〜10%が目安です(中古一棟・モデルケース)。自己資金は「頭金+この諸費用」で考えるのが出発点になります。
- 税金の中心は登録免許税・不動産取得税・印紙税の3つ。いずれも課税標準や軽減特例の有無で金額が変わり、マイホーム向けの軽減(住宅用家屋の特例など)は賃貸の収益物件には原則使えない点が見落とされがちです。
- 不動産取得税は取得の数か月後に納付書が届くため、決済時にお金を使い切ると資金繰りで慌てやすい費用です。
- 本記事は「いくらかかるか=金額の出し方」に絞って買主目線で整理します。仲介手数料の計算・交渉余地や金融機関ごとの手数料比較は関連記事に譲り、ここでは諸費用全体の地図を示します。
一棟収益物件を探していると、物件価格と表面利回りには目が行きますが、「買うときに、物件価格以外にいくら現金が必要なのか」は意外と後回しになりがちです。融資の事前審査が通っても、諸費用分の自己資金が足りずに決済直前で慌てる——現場では珍しくない場面です。
国土交通省の不動産価格指数を見ても、収益物件の価格は近年高止まりが続いています。価格が上がるほど、それに連動する仲介手数料・登記費用・各種税金も増えます。つまり「諸費用は物件価格の数%」という比率の感覚を、はじめに持っておくことが資金計画の土台になります。
諸費用を構成するのは、税金(登録免許税・不動産取得税・印紙税)、専門家への報酬(司法書士)、融資にともなう費用(事務手数料・保証料・保険)、そして決済時に売主と精算する固定資産税などです。一つひとつは聞いたことがあっても、「全部でいくらで、いつ払うのか」を一枚の地図にしている資料は多くありません。
本記事は、その地図を買主目線で描くことを目的としています。アークリブは特定の自社物件を売り込むのではなく、市場全体から最適物件を選定する仲介を主軸とした独立系の不動産会社です。日々の仲介の現場で、買主の方が「ここを見落としやすい」という費用を中心に整理しました。
なお本記事は買主シリーズの取得コスト編です。物件の選び方は一棟収益物件の選び方ガイド、融資の組み方は融資戦略ガイド、価格交渉と買付の進め方は価格交渉・買付申込ガイド、購入前の調査はデューデリジェンスガイドで扱っています。あわせてご覧ください。
税率や軽減特例は、租税特別措置法などにより適用期限のある「特例」が多く、毎年の税制改正で延長・見直しが入ります。本記事の数値は2026年(令和8年)時点の一般的な目安であり、具体的な税額・適用可否は国税庁・お住まいの都道府県・顧問税理士に必ずご確認ください。
1. 購入諸費用は「物件価格の約7〜10%」——まず全体像をつかむ
一棟収益物件の購入諸費用は、新築か中古か、現金か融資か、物件価格の規模によって変わりますが、中古一棟をフルローンに近い形で購入する場合、物件価格の約7〜10%が一つの目安になります(モデルケース)。1億円の物件なら、おおむね700万〜1,000万円前後の諸費用がかかる計算です。
この比率を最初に押さえておくと、「自己資金がいくら必要か」「手元資金をどこまで使ってよいか」の判断がぶれにくくなります。
1-1. 諸費用の一覧表(何に・いくら・誰に・いつ払うか)
まず全体像を一覧にします。金額は中古一棟のモデルケース・一例です。
| 費用項目 | 概算の目安 | 性質・支払先 | 支払うタイミング |
|---|---|---|---|
| 仲介手数料(買主負担) | (売買価格×3%+6万円)+消費税 | 不動産会社 | 売買契約時・決済時 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額×税率(後述) | 税金(国)/登記時 | 決済・登記時 |
| 司法書士報酬 | 数万〜十数万円程度 | 司法書士 | 決済・登記時 |
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額×3〜4%(後述) | 税金(都道府県) | 取得の数か月後 |
| 印紙税 | 契約金額帯による(後述) | 税金(国) | 契約時 |
| ローン事務手数料 | 定額5.5万円程度 または 借入額×1.1〜2.2% | 金融機関 | 融資実行時 |
| ローン保証料 | 借入額・期間による(かからない商品もある) | 保証会社 | 融資実行時 |
| 火災・地震保険料 | 建物規模・補償内容による | 損害保険会社 | 融資実行時〜 |
| 固定資産税・都市計画税の精算金 | 引渡日以降分を日割り | 売主への精算(税金そのものではない) | 決済時 |
このうち金額が大きいのは仲介手数料・ローン事務手数料・不動産取得税・登録免許税の4つです。本記事ではこの4つを中心に、金額の出し方を順に見ていきます。なお仲介手数料(買主の「3%+6万円+税」)の計算式・速算表・交渉の考え方は価格交渉・買付申込ガイドで詳しく扱っているため、本記事では諸費用一覧の1項目として位置づけます。
1-2. 自己資金は「頭金+諸費用」で考える
融資の話になると頭金(自己資金)の割合に注目が集まりますが、諸費用は原則として融資に含めにくい(または含めても審査が厳しくなる)部分です。そのため、用意すべき自己資金=頭金+諸費用として資金計画を立てるのが安全です。
たとえば1億円の物件を自己資金20%(2,000万円)で購入する場合でも、諸費用が800万円かかれば、実際に必要な現金は2,800万円前後になります。物件選定の段階から諸費用を織り込む考え方は一棟収益物件の選び方ガイドでも触れています。金融機関ごとの諸費用の扱いの違いは融資戦略ガイドをご参照ください。
1-3. 新築一棟と中古一棟で諸費用はどう変わるか
新築一棟は、不動産取得税や登録免許税で新築住宅向けの軽減が使える余地がある一方、建物の固定資産税評価額が高く出やすいため、軽減を使っても税額自体は中古より大きくなることがあります。中古一棟は評価額が下がっている分、税額は抑えられますが、中古特有の軽減は自己居住用が要件のものが多く、賃貸では使えないことが多い点に注意が必要です(詳細は各章で解説します)。
2. 登記にかかる税金①——登録免許税(所有権移転・抵当権設定)
物件を取得して自分の名義に登記する際にかかるのが登録免許税です。買主の場合、主に次の2つで発生します。
- 所有権移転登記(土地・建物の名義を売主から買主へ移す)
- 抵当権設定登記(融資を受ける際、金融機関が担保を設定する)
2-1. 課税標準は「固定資産税評価額」(売買価格ではない)
登録免許税の所有権移転登記は、売買価格ではなく「固定資産税評価額」を課税標準とします。固定資産税評価額は時価より低めに出ることが一般的(土地は公示価格の7割程度が一つの目安)で、売買価格そのものに税率を掛けるわけではありません。一方、抵当権設定登記は「借入額(債権金額)」が課税標準になります。
2-2. 所有権移転登記の税率と、収益物件の注意点
所有権移転登記(売買)の登録免許税の税率は、おおむね次の通りです(2026年時点)。
| 対象 | 本則 | 軽減税率 | 収益物件(賃貸)への適用 |
|---|---|---|---|
| 土地の所有権移転 | 2.0% | 1.5%(令和11年3月31日まで) | ○(用途を問わない軽減のため賃貸の土地にも適用) |
| 建物の所有権移転(中古) | 2.0% | 0.3%(住宅用家屋・令和9年3月31日まで) | ×(自己居住用が要件。賃貸は本則2.0%) |
ここが買主目線の最重要ポイントです。マイホームの記事では「建物の登録免許税は0.3%」と書かれていることが多いのですが、住宅用家屋の軽減税率(0.3%など)は「自己の居住用」が要件で、オーナーが住まない賃貸の一棟物件には原則適用されません。収益物件の建物は本則の2.0%で見積もるのが安全です。
※土地の所有権移転の軽減税率(1.5%)は租税特別措置法第72条第1項による特例で、令和8年度の税制改正により令和11年3月31日まで延長されています。一方、建物(住宅用家屋)の軽減税率(移転0.3%・保存0.15%)は令和9年3月31日までの特例ですが、適用には「床面積50㎡以上・自己の居住用・取得後1年以内の登記・市区町村長の証明書」が必要で、オーナーが居住しない賃貸の収益物件は対象外です。
2-3. 抵当権設定登記の税率(収益物件は0.1%特例の対象外)
融資を受ける場合、借入額に対して抵当権設定登記の登録免許税がかかります。
- 本則:借入額(債権金額)×0.4%
- 住宅取得資金の特例(0.1%・租税特別措置法第75条・令和9年3月31日まで)は、登録免許税の住宅用家屋軽減と同じく自己居住用・床面積50㎡以上等が要件のため、賃貸の収益物件は本則0.4%で計算します。
借入8,000万円なら、8,000万円×0.4%=32万円が目安です。
2-4. 司法書士報酬の目安
登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的で、上記の登録免許税(実費)とは別に司法書士報酬がかかります。金額は登記の件数や物件の規模、地域によって幅がありますが、一棟物件の所有権移転+抵当権設定でおおむね数万〜十数万円程度が一例です。報酬額は事務所により異なるため、見積もりを取って確認します。
3. 取得後にやってくる「不動産取得税」
不動産取得税は、不動産を取得したことに対して都道府県が課す税金です。最大の特徴は、決済から数か月後(自治体により半年〜1年程度かかることも)に納付書が届くこと。決済時に手元資金を使い切っていると、後からまとまった納税が来て資金繰りに困る——という相談は少なくありません。
3-1. 税率と課税標準
- 課税標準:固定資産税評価額(売買価格ではない)
- 税率(2026年時点)
- 土地:3%(本則4%→特例3%・令和9年3月31日まで)
- 住宅の家屋(賃貸アパート・マンションを含む):3%(同じ特例)
- 住宅以外の家屋(店舗・事務所など):4%(本則)
一棟の賃貸住宅であれば、土地・建物とも3%が基本です。ただし1階が店舗・事務所などの非住宅部分を含む場合、その部分は4%となるため、住宅と非住宅が混在する物件は按分に注意します。
3-2. 宅地の課税標準は「2分の1」
宅地(住宅地など)として評価される土地は、不動産取得税の課税標準が固定資産税評価額×1/2となる特例があります(地方税法の特例・令和9年3月31日まで/最新は都道府県にご確認ください)。土地評価額3,000万円なら、3,000万円×1/2×3%=45万円が目安です。
3-3. 賃貸住宅(収益物件)に住宅の軽減は使えるか
不動産取得税には、住宅を取得した場合の課税標準からの控除があります。国土交通省の資料では、新築住宅は1戸あたり1,200万円を控除、中古住宅は新築時における控除額と同額を控除とされています。賃貸住宅への適用のポイントは次の通りです(要件・金額は変動するため要確認)。
- 新築の賃貸住宅:共同住宅の場合、1戸あたりの床面積が一定の範囲(例:40㎡以上240㎡以下)にあることなどの要件を満たせば、1戸ごとに控除を受けられる余地があります。
- 中古の賃貸住宅:中古住宅の控除は「個人が自己の居住用に取得した住宅」を要件とするものが中心で、賃貸用の中古一棟は対象外となることが多いです。中古一棟は控除なしで見積もるのが安全です。
3-4. 「あとから来る税金」への備え
不動産取得税は、上記の通り取得後しばらくしてから請求されます。モデルケースで土地・建物あわせて100万円超になることもあるため、決済時の資金計画に「数か月後の不動産取得税」を別枠で確保しておくと安心です。
4. 契約時にかかる「印紙税」(売買契約書・ローン契約書)
契約書を紙で作成する場合、記載金額に応じた印紙税がかかります。買主が関わるのは主に2つの契約書です。
4-1. 不動産売買契約書の印紙税(軽減措置あり)
不動産の売買契約書には、記載金額に応じた印紙税がかかりますが、軽減措置が設けられています(平成26年4月1日〜令和9年3月31日までに作成されるもの)。金額帯別は次の通りです。
| 契約金額 | 本則 | 軽減後 |
|---|---|---|
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
4-2. 金銭消費貸借契約書(ローン契約書)は軽減なし
融資を受ける際の金銭消費貸借契約書(ローン契約書)にも印紙税がかかりますが、こちらは不動産売買契約書のような軽減措置がなく本則です。本則では5,000万円超〜1億円以下が6万円、1億円超〜5億円以下が10万円。借入8,000万円なら6万円が目安です。売買契約書の軽減と混同しやすいので、別々に見積もります。
4-3. 電子契約なら印紙税は不課税
近年は不動産の売買・融資でも電子契約が広がっています。電子契約(電子データのみで作成し、紙の契約書を交付しない)の場合、現行の取扱いでは印紙税は課税されません。紙か電子かで数万円単位の差が出るため、契約方式は事前に確認しておくとよいでしょう。
5. 融資にともなう費用(事務手数料・保証料・団信・保険)
融資を使う場合、金融機関や保険に関する費用が加わります。金額のインパクトが大きいわりに、金融機関ごとの差が出やすい領域です。
5-1. ローン事務手数料・保証料
- 事務手数料:金融機関に支払う手数料で、設計は銀行により大きく異なります。定額型(5万5,000円など)から、定率型(借入額×1.1%・2.2%など)まで幅があり、定率2.2%が最も高い価格帯です。定率2.2%・借入8,000万円なら176万円となり、諸費用の中でも大きな割合を占めます。
- 保証料:保証会社を利用する場合の費用。借入額・期間に応じて発生し、一括前払い型と金利上乗せ型があります。事務手数料型のローンでは保証料がかからないこともあります。
事務手数料と保証料は金融機関によって設計が大きく異なり、総支払額に直結します。どの金融機関がどの方式かは融資戦略ガイドで整理していますので、本記事では「諸費用として大きい項目」という位置づけにとどめます。
5-2. 火災保険・地震保険
融資を受ける場合、建物への火災保険加入が条件になるのが一般的です。一棟物件は建物の規模が大きいため、戸建てやマイホームより保険料が大きくなりやすく、補償内容・建物構造・所在地・保険期間によって幅があります。地震保険を付帯するかどうかでも変わります。長期一括で支払うとまとまった金額になるため、諸費用に含めて見積もります。
5-3. 団体信用生命保険(団信)
団信は、契約者に万一のことがあった際に残債が弁済される保険です。アパートローンでは金利上乗せ型が多く、その場合は諸費用(初期費用)ではなく金利(ランニングコスト)に含まれます。団信が任意か必須か、上乗せ幅はどの程度かは金融機関により異なります。
6. 決済日に精算する「固定資産税・都市計画税」
固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日時点の所有者(売主)に対して課税されます。そのため年の途中で物件を引き渡す場合、引渡日以降の分を買主が日割りで負担し、売主に精算金として支払うのが商慣習です。
6-1. これは「税金」ではなく「当事者間の精算」
注意したいのは、この精算金は買主が税務署・自治体に納める税金ではなく、売主・買主間の合意に基づく精算だという点です。法律上の納税義務者はあくまで1月1日時点の所有者(売主)です。
6-2. 起算日の慣習(関東1月1日/関西4月1日)
日割りの起算日には地域慣習があり、関東では1月1日起算、関西では4月1日起算が一般的とされます。同じ引渡日でも起算日の取り方で買主負担額が変わるため、売買契約の条件として明確にしておきます。年税額が30万円の物件を6月末に引き渡す場合、1月1日起算なら残り約半年分(約15万円)が買主負担、という形で計算します(一例)。
7. モデルケース——物件価格1億円・中古RC一棟の諸費用総額
ここまでの費用を、一つのモデルケースで合算してみます。あくまで金額の出し方を示す一例であり、実際の金額は物件の評価額・金融機関・契約方式・地域によって変わります。
【前提(モデルケース・一例)】
- 物件価格:1億円(中古RC造一棟)
- 固定資産税評価額:土地3,000万円/建物2,500万円(仮定)
- 借入:8,000万円(事務手数料は定率2.2%=最も高い価格帯を保守的に採用・保証料は事務手数料に内包と仮定)
- 契約書:紙で作成
| 項目 | 計算 | 概算 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | (1億円×3%+6万円)×1.1 | 約337万円 |
| 登録免許税(土地移転) | 3,000万円×1.5% | 45万円 |
| 登録免許税(建物移転) | 2,500万円×2.0% | 50万円 |
| 登録免許税(抵当権設定) | 8,000万円×0.4% | 32万円 |
| 司法書士報酬 | 一例 | 約15万円 |
| 不動産取得税(土地) | 3,000万円×1/2×3% | 45万円 |
| 不動産取得税(建物) | 2,500万円×3% | 75万円 |
| 印紙税(売買契約書・軽減) | 1億円超〜5億円以下 | 6万円 |
| 印紙税(ローン契約書・本則) | 5,000万円超〜1億円以下 | 6万円 |
| ローン事務手数料 | 8,000万円×2.2% | 176万円 |
| 火災・地震保険料 | 一例 | 約30万円 |
| 固定資産税等の精算金 | 一例(日割り) | 約20万円 |
| 合計 | — | 約837万円 |
この場合、諸費用は物件価格の約8.4%となりました。自己資金を頭金2,000万円と見込んでいたとしても、実際には2,800万円前後の現金が必要になる計算です。
※建物の不動産取得税は、新築の賃貸住宅で床面積要件を満たせば控除でさらに下がる余地があります。中古の賃貸では控除が使えないケースが多いため、本モデルでは控除なしで計算しています(要確認)。
8. 買主目線で「諸費用の見落とし」を防ぐ
最後に、買主の方が実務でつまずきやすいポイントと、諸費用の将来的な意味を整理します。
8-1. 自己資金がショートする典型パターン
- 仲介手数料・登記費用までは見込んでいたが、ローン事務手数料(定率2.2%)の大きさを見落とした
- 不動産取得税が後から来ることを資金計画に入れていなかった
- 中古の賃貸物件にマイホーム向けの軽減が使える前提で税額を低く見積もっていた
いずれも「金額の出し方」を最初に押さえていれば防げるものです。
8-2. 購入時の諸費用は、将来の売却時に「取得費」になる
購入時に支払った仲介手数料・登録免許税・不動産取得税・印紙税などの多くは、将来その物件を売却する際の「取得費」として、譲渡所得の計算上で差し引ける場合があります。取得費が大きいほど売却益(譲渡所得)が圧縮され、結果として売却時の税負担に影響します。
そのため、購入時の諸費用の領収書・明細はすべて保管しておくことが大切です。売却時の譲渡所得・短期/長期の税率・取得費の詳しい扱いは一棟アパート売却の税金ガイドで解説しています。本記事では「取得時に払った費用が将来の取得費になる」という点だけ押さえておいてください。
8-3. 法人で購入する場合
法人で収益物件を取得する場合、これらの諸費用の会計・税務上の扱い(資産計上か費用処理か)は個人とは異なります。法人化の判断材料や法人ならではの考え方は法人不動産投資・節税ガイドで扱っています。具体的な処理は顧問税理士にご確認ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 一棟収益物件の購入諸費用は、結局いくらみておけばよいですか?
A. 中古一棟をローンで購入する場合、物件価格の約7〜10%が一つの目安です(モデルケース)。現金購入で融資費用がなければ低く、定率型の事務手数料を使うと高くなります。
Q2. 諸費用はローンに含められますか?
A. 金融機関によっては諸費用ローンや上乗せに対応する場合もありますが、審査が厳しくなる傾向があります。原則は「頭金+諸費用」を自己資金として準備する前提で計画するのが安全です。詳しくは融資戦略ガイドをご覧ください。
Q3. 建物の登録免許税が0.3%と書いてある記事を見ましたが?
A. それは自己居住用(マイホーム)の住宅用家屋の軽減税率です。オーナーが住まない賃貸の一棟物件は対象外で、本則の2.0%で見積もります。
Q4. 不動産取得税はいつ来ますか?
A. 取得後しばらくしてから(自治体により半年〜1年程度かかることも)納付書が届きます。決済時に資金を使い切らず、別枠で確保しておくと安心です。
Q5. 中古の賃貸物件でも不動産取得税の住宅控除は使えますか?
A. 中古住宅の控除は「自己の居住用」を要件とするものが中心で、賃貸用の中古は対象外になることが多いです。新築の賃貸は床面積要件を満たせば控除の余地があります(要確認)。
Q6. 印紙税は売買契約書とローン契約書の両方にかかりますか?
A. はい。ただし売買契約書は軽減措置あり、ローン契約書(金銭消費貸借契約書)は軽減なし(本則)で、税額の出し方が異なります。電子契約なら印紙税は不課税です。
Q7. 固定資産税の精算金は税金ですか?
A. いいえ。これは売主・買主間の精算で、税務署に納めるものではありません。起算日(関東1/1・関西4/1の慣習)で買主負担額が変わります。
Q8. 仲介手数料の「3%+6万円」は値引きできますか?
A. 手数料の計算方法・両手/片手・交渉の考え方は価格交渉・買付申込ガイドで詳しく扱っています。本記事では諸費用一覧の1項目として位置づけています。
Q9. 新築一棟と中古一棟、諸費用が安いのはどちらですか?
A. 一概には言えません。中古は評価額が低く税額を抑えやすい一方、賃貸向けの中古軽減は使いにくいです。新築は軽減の余地がある一方、建物評価額が高めに出ます。物件ごとに試算が必要です。
Q10. 諸費用を抑える方法はありますか?
A. 電子契約による印紙税の不課税化、事務手数料の方式(定額/定率)の比較、火災保険の補償・期間の最適化などが考えられます。ただし軽減特例は要件と期限があるため、無理に当てはめず、最新情報を専門家に確認することが大切です。
まとめ:購入諸費用チェックリスト
一棟収益物件を購入する際は、物件価格だけでなく次の諸費用を最初に見積もりましょう。
- 諸費用は物件価格の約7〜10%を目安に、自己資金は「頭金+諸費用」で計画したか
- 登録免許税:建物は本則2.0%・抵当権設定は0.4%(収益物件は住宅軽減の対象外)で見積もったか
- 不動産取得税:土地・住宅3%、課税標準は固定資産税評価額。後から来ることを資金計画に入れたか
- 印紙税:売買契約書(軽減あり)とローン契約書(軽減なし)を別々に。電子契約なら不課税
- ローン事務手数料:定額型か定率型(×1.1〜2.2%)かを確認したか
- 火災・地震保険/司法書士報酬/固都税精算金を見込んだか
- 諸費用の領収書・明細を保管(将来の売却時の取得費になる)したか
諸費用は「見えにくいコスト」ですが、最初に地図を持っておけば資金計画は大きくぶれません。
アークリブは、特定の自社物件を売り込むのではなく、市場全体から最適物件を選定する仲介を主軸とした独立系の不動産会社です。一棟収益物件の購入・売却のどちらについても、諸費用や資金計画を含めてご相談いただけます。
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主な出典(2026年6月時点)
- 国税庁/税務署「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」(令和8年4月・土地の所有権移転1.5%は令和11年3月31日まで延長)
- 国税庁「印紙税額一覧表」(令和8年5月22日現在)
- 国土交通省「住宅:不動産取得税に係る特例措置」(mlit.go.jp)
※本記載は一般的な情報提供であり、税率・軽減特例の要件や適用期限は変動します。具体的な税額・税務判断は、お住まいの都道府県・国税庁の最新情報および顧問税理士に必ずご確認ください。