相続前の不動産取得「5年ルール」2027年相続税改正の要点|取得タイミングの考え方はどう変わるか
最終更新:2026年7月13日
相続や事業承継を見据えて賃貸用の不動産を取得し、相続税の評価額を圧縮する——。賃貸用不動産の取得が相続対策の検討材料になる場面は、これまでもありました。ただし、その効果や適用の可否は物件・保有期間・相続時期・税務判断によって異なります。そして今回、その「前提となる保有期間」が2027年から静かに変わります。
令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日公表)で、課税時期前5年以内に取得した一定の貸付用不動産を時価で評価する、いわゆる「5年ルール」が示されました。「3年ルールの延長」と紹介されることもありますが、正確には少し違います(本文で整理します)。適用は令和9年(2027年)1月1日以後に相続等で取得する財産の評価からです。
ここで多くの方が戸惑うのが、不動産の世界には「5年」という言葉が2つあることです。一つは売却したときの税金(譲渡所得の短期・長期の区分)。もう一つが、今回の主題である相続税評価の「5年ルール」です。名前は同じでも、中身はまったくの別物です。
この記事では、まずこの2つの「5年」をきれいに切り分けたうえで、今回の改正で「何が・誰に・いつから」変わるのかを整理します。
そのうえで、2026年中の相続・贈与と2027年以後の相続・贈与で何が分岐するのか、進行中の相続対策プランは見直しが必要なのか、という実務の論点まで、1棟収益物件の仲介の現場で見られる傾向を交えてご案内します。
対象として想定しているのは、自社株や金融資産の積み上がりとあわせて将来の相続・事業承継を考えている経営者・資産オーナーの方です。
なお本記事は一般的な情報提供であり、特定の税額や個別の税務判断を示すものではありません。具体的な評価額・税額は、必ず顧問税理士にご確認ください。
「5年ルール」と聞いて混同しやすい、2つの「5年」
不動産にまつわる相談で「5年ルールって結局どっちの話ですか」と聞き返されることは少なくありません。それくらい、この言葉は2つの制度で使われています。先に整理しておきます。
これは「持っている不動産を売る出口」の論点であり、相続税とは別の税目の話です。短期・長期の税率や所有期間の数え方そのものは、当社ブログの基礎記事で詳しく解説しています(関連記事:一棟アパート売却の税金)。本記事ではこれ以上は展開しません。
2027年 相続税改正(令和8年度税制改正)で何が変わったのか
今回の改正は、令和8年度税制改正大綱の「相続税等の財産評価の適正化」に盛り込まれた、いわゆる貸付用不動産の評価方法の見直しです。核心は一文で言えば「相続・贈与の直前に賃貸用不動産を取得して評価を下げる、その『直前』の取得に、課税時期前5年以内という時間の物差しが入った」こと。要点を分解します。
判定期間は「課税時期前5年以内」——単純な「3年からの延長」ではない
改正後は、課税時期(相続や贈与のあったとき)から遡って5年以内に対価を伴う取引で取得・新築した一定の貸付用不動産が、通常の取引価額(時価)による評価の対象になります。
「3年ルールが5年に延長された」と説明されることがありますが、厳密には単純な延長ではありません。個人が直接保有する貸付用不動産を取得時期を基準に時価評価する一般的な取扱いは、今回が事実上の新設です。従来から「3年」の取扱いがあったのは、非上場株式を純資産価額方式で評価する場面の法人保有不動産という、別の場面でした(FAQでも整理しています)。
実務の感覚に引き直せば、「買ってから相続まで5年を超えて保有していれば、原則として通常の財産評価(路線価・固定資産税評価額ベース)を前提に検討しやすい」という新しいラインが引かれた、ということです。従来「3年」という目安で考えていた方ほど、必要な保有期間は長くなります。
いつから適用?——令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与から
この改正が適用されるのは、令和9年(2027年)1月1日以後に相続・贈与によって取得する財産の評価からです。
ここは実務上きわめて重要なので強調します。2026年(令和8年)中の相続・贈与には、この新しい5年ルールは適用されません(個人が直接保有する不動産は従来どおりの評価。資産管理会社が保有する場合の株式評価では、従来から「3年」の取扱いがあります)。改正は「いつ買ったか」ではなく「いつ相続・贈与が起きたか(課税時期)」で線引きされる点に注意が必要です。取得時期に遡りの制限はないため、たとえば2023年に取得した物件でも、2027年中に相続が発生して取得から5年以内であれば対象になり得ます。
また、大綱には経過措置も示されています。改正を通達に定める日までに、その日の5年前から所有している土地に新築した家屋(その日において建築中のものを含む)には適用しない、という内容です。以前からお持ちの土地での賃貸住宅の建築計画に配慮した措置ですが、通達の発遣日自体がまだ決まっていないため、この経過措置の「期限」も現時点では確定していません。取得日の定義や対象資産の細かな線引きなど、細目は今後の通達等で確認が必要です。境界線上のケースほど、最新情報の確認が欠かせません。
対象は「一定の貸付用不動産」に限られる——過度な一般化に注意
この改正でもっとも誤解されやすいのが、対象範囲です。時価評価の対象になるのは、あくまで一定の貸付用(賃貸用)不動産です。
財務省が公表した大綱の本文で確認できる範囲では、一般のご自宅(居住用)や、更地、実需向けの不動産そのものは、この見直しの主たる対象ではありません。「これからは不動産がすべて時価評価になる」という理解は行き過ぎです。あくまで、相続税対策として賃貸用不動産を直前に取得するスキームへの規制強化、という趣旨で捉えるのが正確です。
賃貸用かどうか、どの範囲が「一定の」に当たるかといった個別の線引きは、最終的に顧問税理士が判断する領域です。物件が対象になるかどうかが微妙なケースほど、早めに顧問税理士へ確認し、物件情報・取得時期の整理は当社にご相談ください。
一次情報は、財務省「令和8年度税制改正の大綱」のほか、PwC・EY Japanなど専門ファームの解説で確認できます。本記事末尾に出典を掲載しています。
関連改正の適用時期まとめ
この改正の細目は、国税庁の通達で定められる見込みです。通達はまだ発遣されておらず(2026年秋頃との見方が報じられています)、パブリックコメントも実施されていません。対象範囲・評価の計算方法・取得日の扱いなどの細目は、通達待ちの状態です。本記事は通達の発遣後に更新します。
なぜ「3年」ではなく「5年」なのか——規制の背景
改正の意図を理解しておくと、自社のプランがどちらに転ぶかを判断しやすくなります。
そもそも、なぜ賃貸用不動産で相続税評価が下がるのか。ごく簡単に言えば、現預金が額面どおり評価されるのに対し、土地は路線価、建物は固定資産税評価額をベースに評価され、さらに人に貸している(貸家・貸家建付地)と評価がもう一段下がる、という評価方式の差があるためです。この「評価圧縮」の仕組み自体は、当社の相続税対策の基礎記事で図解とともに解説しています(関連記事:相続税対策 一棟マンション完全ガイド)。本記事では仕組みの再掲はしません。
問題視されてきたのは、この差を相続発生の直前に駆け込みで取得して使うやり方でした。極端な例では、相続が近いと見られる時期にまとまった借入で賃貸物件を取得し、評価圧縮と債務控除で相続税を大きく減らす、という動きです。過去には、こうした取得が「不当な評価減」として税務署に否認され、裁判(最高裁令和4年〔2022年〕4月19日判決など)にまで至った例もあります。
こうした動きへの歯止めとして、非上場株式の評価(純資産価額方式)の場面では、法人が取得後3年以内の不動産を時価で評価する取扱いが以前から機能してきました。今回はこれに加えて、個人の直接保有にも「5年」というより長い物差しが導入されたかたちです。「短期保有での評価圧縮」をより使いにくくし、本来の賃貸事業としての実態を伴う保有を求める方向に、規制の網が一段強まったと理解できます。
裏を返せば、早くから計画的に取得し、賃貸事業として実態をもって長く保有しているケースほど、改正の影響を受けにくいということでもあります。
誰が影響を受けるのか——対象と対象外を整理する
「自分は関係あるのか」を切り分けるために、影響を受けやすい立場と、そうでない立場を並べます。あくまで一般的な傾向であり、最終判断は顧問税理士によります。
影響を受けやすいケース
- 相続・贈与を数年内に見据えて、これから賃貸用不動産の取得を検討している個人オーナー
- 資産管理会社を通じて不動産を保有し、自社株評価の圧縮を図ろうとしている経営者(純資産価額方式が論点)
- 事業承継で自社株を後継者へ移すタイミングを計画している富裕層オーナー
- 「とりあえず相続前に1棟買っておく」という、取得タイミングが相続時期に近い前提のプラン
影響を受けにくい・対象外のケース
- 一般のご自宅(居住用)や更地のみを保有しているケース(今回の主たる対象ではありません)
- すでに5年を超えて賃貸用不動産を保有しており、賃貸事業の実態があるケース
- 当面、相続・贈与の予定がなく、賃貸事業として長期保有を前提にしているケース
ここで強調したいのは、改正は「不動産による相続税対策が封じられた」という話ではないということです。封じられたのは「直前の駆け込み取得という時間の使い方」であって、計画的・長期的に賃貸事業を営むという基本路線は、むしろ相対的に重要性が増したとも言えます。
個人で持つか、資産管理会社で持つか——ルートで論点が変わる
同じ「賃貸用不動産を持つ」でも、個人で直接保有するか、資産管理会社(法人)を通じて保有するかで、5年ルールの効き方が変わります。
どちらのルートを採るかは、所得規模・既存の法人の有無・事業承継の計画・融資の組み方など、複数の要素を総合して決まるテーマです。当社では、それぞれのルートで「どの物件を、いつ取得するか」が変わってくる点を、仲介の立場から整理してお伝えしています。最終的な税務上の有利・不利の判断は顧問税理士の領域です(関連記事:自社株評価を不動産で圧縮する完全ガイド、中小企業オーナーのための法人不動産投資 節税完全ガイド)。
なお、株式評価側(純資産価額方式)の「3年」の取扱いは、今回の大綱では変更が示されておらず、現時点では従来どおりです。ただし、国税庁では非上場株式の評価方法全体の見直しが検討されており、この場面の取扱いも今後変わる可能性があります(内容・時期は未定)。資産管理会社ルートを検討している場合ほど、動向の確認が欠かせません。
持株会社を軸にした承継設計と5年ルールの時間軸の考え方は「持株会社で進める事業承継 完全ガイド」で整理しています。
2026年中と2027年以降で何が分岐するのか
実務でいちばん質問が多いのが、ここです。「結局、2026年と2027年で何が違うのか」。判定の軸は課税時期(相続・贈与が起きた日)でしたね。これを起点に整理します。
モデルケースで考える取得タイミングの違い(一例)
数値はすべてモデルケース(一例)です。実際の評価額・税額を示すものではありません。
ある製造業のオーナー(70代)が、相続を見据えて賃貸用の1棟収益物件の取得を検討しているとします。
- これまでの感覚:「取得から3年」をひとつの目安として語られることが多く、取得時期にある程度の余裕を見ていた。
- 5年ルール下の感覚:目安が「5年」とはっきり長くなるため、取得を前提とするなら、相続発生が読みにくい高齢期ほど、保有期間・賃貸の実態・物件の適格性を早めに確認・準備しておく必要が高まる。逆に、着手が遅れて取得から5年に満たないうちに相続が発生すると、その物件は時価評価となり、期待した圧縮効果が出ない可能性がある。
このモデルケースが示すのは、「改正で対策が無意味になった」のではなく、「着手の早さの重要性が増した」ということです。具体的な取得規模・借入・税額のシミュレーションは、顧問税理士と連携のうえで個別に検討する領域になります。
進行中の相続対策プランは、見直しが必要か
すでに「3年」という従来の目安を前提に動いているプランがある場合、点検しておきたい視点を挙げます。これは「対策をやめるべき」という話ではなく、「前提が変わった部分だけを当て直す」ための観点整理です。
見直しの4つのチェック観点
- 課税時期が2027年以降にまたぐ可能性はないか——ご高齢の被相続人を想定したプランほど、相続発生が2027年以降になる前提で「保有年数が5年に届くか」を見ておく。
- 取得から相続までの保有年数に、余裕があるか——5年という新しい目安に対して、今の取得時期で十分な保有期間を確保できるか。着手の前倒しで解決するなら、それが最もシンプルな対応になります。
- 80%評価方式の適用可能性を確認しているか——時価評価となる場合でも、課税上の弊害がないと認められるときに限り、取得価額ベースの80%評価という簡便法が検討できます。適用可否と計算結果は、顧問税理士による確認が前提です。
- 小規模宅地等の特例との適用関係を確認しているか——貸付事業用宅地等に対する小規模宅地等の特例(限度面積までの50%減額)自体は、今回の大綱では改正が示されていません。ただし、5年ルールで時価評価となった場合にどう適用されるかは大綱段階では明示されておらず、通達等での確認が必要です。適用の可否は顧問税理士にご確認ください。
「焦って買う」が最もリスクになりうる
逆説的ですが、5年ルールへの最もリスクの高い対応は、制度理解が不十分なまま2026年中に駆け込みで取得することになりかねません。課税時期が2027年以降にずれれば、結局は5年ルールの土俵に乗りますし、賃貸事業としての実態が伴わない取得は、期間に関係なく否認リスクを抱えます。
大切なのは、節税の数字から逆算して物件を選ぶのではなく、賃貸事業として保有に値する物件を、計画的なタイミングで取得するという順序です。結果として評価面の安定材料にもなり得ます。
「実態のある賃貸保有」とは何か——期間だけではない論点
5年ルールは「保有期間」に注目した改正ですが、相続税評価をめぐる過去の否認事例が示してきたのは、期間だけでなく「賃貸事業としての実態」も見られるということでした。期間の要件をクリアしていても、実態が伴わなければ安心とは言い切れません。逆に、実態のある保有を続けていることは、長期的な安定材料になります。
ここは、税額の計算ではなく「物件がどう使われているか」という、不動産仲介・賃貸管理の現場に近い論点です。一般的に、次のような点が「実態のある賃貸保有」を支える要素として挙げられます。
これらは、相続の何年前に買ったか、という時間軸とは別の「保有の中身」に関わる論点です。当社が物件選定の段階で立地・稼働率・建物状態を重視するのは、まさにこの「保有の中身」が、長く持つほどに効いてくるからです。評価のための保有ではなく、事業として成り立つ保有を起点に置くことが、結果的に5年ルール下でも揺らぎにくいポジションをつくります。
税制だけで決めない——取得前に確認したい物件側の6つの条件
5年ルールの下では、取得した物件を数年単位で保有し続ける前提で考えることになります。そうなると、税制の入り口で有利かどうか以上に、その物件が長い保有に耐えられるかという「物件側の条件」が重要になります。評価差を見込まなくても賃貸事業として成立するか——仲介の現場で、取得前の確認をおすすめしている観点は次の6つです。
これらは税額の計算ではなく、物件と市場を見る不動産側の作業です。6つの条件を満たす物件は、結果として賃貸事業としての実態も説明しやすく、5年ルール下の保有でも軸がぶれにくくなります。
すでに保有している物件についても、今回の改正だけを理由に売却を急ぐ必要はありません。稼働状況・修繕予定・借入残高・現在の売却価格の目安といった材料を並べたうえで、残す物件・入れ替える物件を落ち着いて仕分けるのが順序です。資産の入れ替えを検討する場合の税制(関連記事:収益物件の買い替え特例完全ガイド)や、相続した物件を売却する場合の税金(関連記事:相続した一棟アパートを売却する際の税金と注意点)は、それぞれ別記事で整理しています。税務上の判断は、顧問税理士へのご確認が前提です。
個人で持つか資産管理会社で持つか、いつ・どの順序で動くかは、すでにお持ちの資産やご家族の状況によって考え方が変わります。制度の一般的な整理から、具体的な税額・税務判断は顧問税理士と連携しながら、不動産の実務面をご一緒に確認します。
取得相談はこちら / 保有物件の無料査定はこちら
※当社の査定は、市場での売却価格の目安をご案内するものです。相続税上の評価額や制度の適用可否を判定するものではありません。
贈与という時間の使い方——暦年贈与・相続時精算課税との関係
5年ルールは「相続・贈与の課税時期」を起点に判定されるため、贈与をどう使うかという時間軸とも関わります。今回の大綱では、贈与に関する基礎控除の枠組み自体は維持されました。
暦年贈与の基礎控除110万円、そして2024年改正で相続時精算課税にも創設された基礎控除110万円/年は、いずれも継続されます。これらは「少しずつ・計画的に」資産を移していくための時間を使う制度であり、駆け込みではない移転の代表例です。
5年ルールの文脈で押さえておきたいのは、賃貸用不動産を贈与する場合も、贈与(課税時期)の時点で取得から5年以内かどうかが問われる、という点です。「贈与すれば期間の論点から外れる」わけではありません。贈与というルートを使う場合も、取得からの保有年数という時間軸は同じように効いてきます。
どの制度を、どの順序で、どのくらいの規模で使うか——ここは典型的に顧問税理士・場合によっては弁護士を交えて設計する領域です。当社は、その設計の前提となる「不動産という資産をいつ・どう持つか」の部分で、選択肢を整理する役割を担います。具体的な贈与税額・相続税額の試算は、必ず顧問税理士にご確認ください。
仲介の立場として、アークリブができること
アークリブ株式会社は、投資用の1棟収益物件の仲介・コンサルティングを手がける宅地建物取引業者です。税理士・税理士法人ではないため、個別の税額計算や税務判断そのものは行いません。私たちが現場で担えるのは、その手前の部分です。
よくある質問
Q. 2026年中(令和8年)に賃貸用不動産を取得すれば、5年ルールの対象外ですか?
A. 判定は「いつ買ったか」ではなく「いつ相続・贈与が起きたか(課税時期)」で行われます。2027年1月1日以後に相続・贈与が発生すれば、2026年中に取得した物件でも5年ルールの考え方が前提になります。取得年だけで安心せず、課税時期の見通しと保有年数の両面で確認が必要です。取得時期そのものに遡りの制限はなく、改正前に取得した物件でも、2027年以後の相続・贈与の時点で取得から5年以内なら対象になり得ます。
Q. 自宅(居住用)も相続税評価で時価評価の対象になりますか?
A. 今回の見直しの主たる対象は「一定の貸付用(賃貸用)不動産」です。一般のご自宅や更地は主たる対象ではありません。ただし個別の該当性は顧問税理士の判断によります。
Q. すでに10年以上、賃貸物件を保有しています。5年ルール改正の影響はありますか?
A. 取得から5年を超えて賃貸事業の実態をもって保有しているケースは、今回の延長の影響を受けにくい立場です。むしろ、長期・実態のある保有の価値が相対的に高まったと整理できます。
Q. 相続の3年ルールは、いつから5年ルールに変わりますか?(令和9年・2027年)
A. 新しい5年ルールは、令和8年度税制改正大綱で示され、令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与から適用される方向で確定しています。なお「3年ルールが5年に変わる」という言い方は便宜的なもので、厳密には単純な延長ではありません(次のQをご覧ください)。細部は今後の通達等で示されるため、最新情報は顧問税理士にご確認ください。
Q. 「3年ルール」が「5年ルール」に延長されたのですか?
A. いいえ、厳密には単純な延長ではありません。令和8年度税制改正大綱で示されたのは、個人(被相続人等)が課税時期前5年以内に対価を伴う取引で取得・新築した一定の貸付用不動産を、通常の取引価額で評価するという新しい取扱いです。従来から「3年」の取扱いがあったのは、非上場株式を純資産価額方式で評価する場面の法人保有不動産で、こちらは現時点では従来どおりです(株式評価全体の見直しが検討されていますが、内容・時期は未定です。2026年7月12日現在)。
Q. 以前から所有している土地に賃貸住宅を新築する場合も、5年ルールの対象になりますか?
A. 大綱の注書きでは、改正を通達に定める日までに、その日の5年前から所有している土地に新築した家屋(その日において建築中のものを含む)には適用しない、という経過措置が示されています。一律に対象・対象外が決まるのではなく、「土地の所有期間」と「新築のタイミング」の両方の条件で決まる点にご注意ください。通達の発遣日はまだ決まっていないため、この経過措置の期限も未確定です。個別のケースへの当てはめは、顧問税理士にご確認ください。
まとめ——変わったのは「中身」ではなく「時間」
今回の5年ルールの改正で押さえるべきは、次の3点です。
第一に、相続評価の「5年ルール」は、売却時の「所有期間5年(短期・長期)」とは別物だということ。混同したまま判断すると、見当違いの対策になりかねません。
第二に、対象はあくまで「一定の貸付用不動産」であり、適用は2027年1月1日以後の相続・贈与から。判定は課税時期で行われ、2026年中の相続・贈与にはこの新ルールは適用されません(従来どおりの評価です)。
第三に、改正で不動産による相続対策が無意味になったのではなく、「早く・計画的に・実態をもって保有する」ことの重要性が増したということ。焦って駆け込むほど、かえってリスクが増します。
評価額・税額の具体的な判断は顧問税理士の領域です。アークリブは、その手前にある「どの1棟を、いつ取得するか」という物件と時間軸の整理で、仲介の立場からお手伝いします。これは税務相談ではなく、物件と取得時期を整理するためのご相談です。相続・事業承継を見据えた1棟収益物件の取得相談や、保有中物件の出口を含めた無料査定を承ります。まずは、保有・検討中の1棟について、取得のタイミングからお気軽にご相談ください。
出典・参考
制度内容は以下の公表資料に基づいています。具体的な適用は今後の通達等で確定するため、最新情報は一次情報および顧問税理士でご確認ください。
一次情報
専門家による解説
- PwC税理士法人 資産税ニュース「2026年度税制改正大綱」 https://www.pwc.com/jp/ja/taxnews-estate-taxation/assets/eth-20251222-2-jp.pdf
- EY Japan「令和8年度税制改正大綱」解説 https://www.ey.com/ja_jp/technical/ey-japan-tax-library/tax-alerts/2025/tax-alerts-12-23
- 税理士法人山田&パートナーズ「令和8年度税制改正 貸付用不動産の評価方法の見直し」 https://www.yamada-partners.jp/reform/r8/s01-1-revision-of-valuation-method-for-rental-real-estate
最終更新:2026年7月13日(情報確認日:2026年7月12日)。国税庁の通達が発遣され次第、本記事を更新します。
本記載は一般的な情報提供であり、特定の税額や個別の税務判断を示すものではありません。具体的な評価額・税額・適用の可否は、必ず顧問税理士にご確認ください。また、本記載は特定の金融商品(不動産小口化商品・信託受益権等を含む)の取得・売却・保有を推奨するものではなく、当社は金融商品取引業者・投資助言/代理業者ではありません。