海外居住者(非居住者)が日本の収益物件を売却する完全ガイド|源泉徴収・納税管理人・必要書類・海外送金を徹底解説【2026年版】

海外居住者(非居住者)の日本不動産売却クロスボーダーフロー|源泉徴収10.21%・納税管理人・海外送金を視覚化
INDEX目次

この記事のポイント

  • 源泉徴収10.21%:非居住者の不動産売却では買主が売買代金の10.21%を天引き税務署に納付(例:1億円で1,021万円
  • 納税管理人の選任が確定申告の前提:日本在住の親族・税理士が候補。証明書類は在外公館発行のサイン証明・在留証明
  • 租税条約の原則:日本不動産の譲渡益は日本で課税。シンガポール・香港は現地で譲渡益課税が生じにくい(国別に確認)
  • 送金・為替:Wise等のオンライン送金で手数料コスト最適。1ドル150円環境では為替予約・分割送金でリスク管理

 

「日本に収益物件を残したまま海外に移住した」「海外赴任中に相続した日本の一棟物件を売却したい」——こうしたケースでは、通常の売却とは全く異なる税務・法務・実務論点が発生します。

非居住者の日本不動産売却では、売買代金の10.21%が買主から源泉徴収され、納税管理人の選任が確定申告の前提となり、印鑑証明の代わりにサイン証明書が必要になります。

さらに、海外送金・為替リスク・租税条約・外国税額控除など、居住者の売却とは次元の異なる複雑さがあります。

2026年4月時点での円安環境(1ドル150円前後)も続く中、海外居住者が日本不動産を売却する動きは加速していますが、専門知識なしに進めると追徴課税や手取り減少のリスクが大きくなります。

本記事では、非居住者の定義・源泉徴収制度・納税管理人・必要書類・海外送金・確定申告まで、実務で必要な知識を体系的に解説します。

非居住者の定義と不動産売却の基本

「非居住者」とは

税法上の非居住者とは、所得税法2条1項5号で以下のように定義されます:

「居住者」:国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人
「非居住者」:居住者以外の個人

非居住者に該当する典型ケース

ケース非居住者該当
海外勤務で1年以上海外に居住
海外移住・永住
日本に住民票を残したまま海外赴任原則○(実態で判断)
海外在住の相続人が日本物件を相続
外国籍の個人投資家(日本国内不動産保有)(海外在住の場合)
一時的な海外旅行(1年未満)×(居住者のまま)

判定の実態:住民票より「生活の本拠」

住民票が日本にあっても、生活の本拠が海外であれば非居住者として扱われます。

  • 家族と共に海外に居住
  • 海外での就業・滞在期間が長期
  • 日本の社会保険を脱退
  • 住居の所在(賃貸 or 持ち家)

居住者・非居住者で異なる税務上の取扱い

居住者と非居住者で異なる税務

項目

居住者

非居住者

課税所得の範囲

全世界所得

日本国内源泉所得のみ

譲渡所得税率

20.315%(長期)

同じ20.315%

源泉徴収

なし

売買代金の10.21%

確定申告

通常の手続き

納税管理人の選任が必須

住民税

課税

原則非課税(1/1時点で住所なし・家屋敷あれば均等割)


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源泉徴収制度(10.21%)の仕組みと例外

源泉徴収の法的根拠

所得税法212条により、非居住者等から日本国内にある土地等を購入した者は、譲渡対価の10.21%を源泉徴収する義務があります。

源泉徴収の仕組み

立場義務・対応
売主(非居住者)受け取り額は売買代金の89.79%
買主(源泉徴収義務者)売買代金の10.21%を天引き
買主の納付先税務署(支払月の翌月10日まで)

計算例:売買代金1億円の一棟マンション

源泉徴収10.21%の仕組み(売買代金1億円の例)

売買代金 1億円

源泉徴収10.21% 1,021万円(買主が天引き・翌月10日までに税務署納付)

売主の受取 8,979万円(89.79%)

10.21%は暫定税額。確定申告で精算し、売却損・取得費控除等があれば還付されることもある。

源泉徴収が不要になる例外(3要件すべて)

①買主が個人

②売買代金1億円以下

③買主または親族の居住用

一棟収益物件は投資用が通常のため、この例外は当てはまりにくい。

源泉徴収税額の還付

源泉徴収された10.21%は暫定税額であり、確定申告で正確な税額を計算した結果、過大徴収分は還付されます。

還付が発生する典型ケース:

  • 譲渡所得がマイナス(売却損)
  • 取得費・譲渡費用の控除で実税額が源泉徴収額を下回る
  • 買換え特例などの適用

納税管理人制度の活用

納税管理人とは

納税管理人とは、非居住者に代わって日本国内での税務手続きを行う代理人です。国税通則法第117条に基づき、非居住者が日本で確定申告をする前に選任する必要があります。

納税管理人になれる人

候補選任のしやすさ
日本在住の親族◎(一般的)
税理士◎(費用発生・専門性高)
弁護士・司法書士
知人(日本在住)△(信頼関係次第)
法人○(管理会社等)

納税管理人の役割

業務内容
届出書の提出所得税の納税管理人の届出書(税務署)
確定申告書の作成・提出非居住者に代わって税務署へ
納税・還付金の受領日本国内の口座で対応
税務署との連絡・質問対応調査・問い合わせの窓口
書類の保管契約書・領収書・履歴の管理

納税管理人の費用目安

種別費用
親族(無償)0円
税理士(確定申告まで含む)10万〜50万円
税理士(相続絡み含む)50万〜200万円

租税条約と外国税額控除

租税条約の基本

日本は主要国と二重課税防止のための租税条約を締結しています(2026年4月時点で約80カ国)。不動産譲渡益についても、租税条約で課税ルールが定められています。

日本の不動産譲渡益に関する租税条約の原則

ほぼすべての日本が締結している租税条約で:
「不動産の譲渡益は、不動産所在地国で課税する」

つまり、日本の不動産を売却した譲渡益は日本で課税される(租税条約で免除されない)のが原則です。

主要国との租税条約の取扱い

居住国日本で課税居住国での取扱い
米国米国で申告・外国税額控除
カナダカナダで申告・外国税額控除
英国英国で申告・外国税額控除
オーストラリア豪州で申告・外国税額控除
シンガポール不動産譲渡益は非課税国
香港不動産譲渡益は非課税地域
中国中国で申告・外国税額控除

外国税額控除の仕組み

居住国でも課税される場合、日本で支払った税額を居住国の税額から控除できる制度です。

  • 二重課税を防止する国際税務の基本制度
  • 居住国の税務申告で手続き
  • 日本で支払った税額の納税証明書が必要

居住国別の確認ポイント

米国居住者:

  • 米国でも確定申告(Form 1040)が必要
  • 外国税額控除(Foreign Tax Credit)で日本での税額を控除
  • 税率・控除は所得や州により異なるため現地の税務専門家に確認

シンガポール・香港居住者:

  • 不動産譲渡益は現地で非課税
  • 日本での課税のみで完結
  • 居住地国の課税は国別に確認

必要書類と本人確認

日本居住者との違い

書類居住者非居住者
印鑑証明書×(取得不可)
住民票×(住民票なし)
本人確認書類運転免許証等パスポート
サイン証明書不要必須(在外公館で発行)
在留証明書不要必須(在外公館で発行)
納税管理人の届出書不要必須
マイナンバーあり原則なし

サイン証明書とは

サイン証明書(署名証明書)は、本人が在外公館(日本大使館・領事館)で署名したことを証明する書類です。印鑑証明書の代替として、日本の不動産登記・売買契約で使用されます。

在留証明書とは

在留証明書は、在外公館が発行する「本人が現地に居住していることを証明する書類」です。住民票の代替として使用されます。

発行の実務

書類発行元費用期間
サイン証明書日本大使館・領事館1,700円程度当日発行可
在留証明書日本大使館・領事館1,200円程度当日発行可
パスポートコピー本人が用意0円-

※手数料・発行日数・有効期限は国・在外公館・提出先により異なります。

書類取得の注意点

  • 在外公館での発行には本人の出頭が原則必要
  • 一部の国では郵送対応も可能
  • サイン証明書は使用目的を明記したフォームで発行される
  • 書類の有効期限は発行から3ヶ月以内が一般的

海外送金の実務

非居住者の口座への売却代金送金

基本フロー:

  1. 決済日:買主が売買代金を日本国内の納税管理人口座に振込
  2. 源泉徴収分は買主が税務署へ納付
  3. 納税管理人が売主(非居住者)の海外口座へ送金

海外送金の主要ルート

送金方法手数料時間
銀行送金(SWIFT)5,000〜10,000円+中継行費用3〜5営業日
オンライン送金(Wise等)為替手数料のみ(0.5%前後)1〜3営業日
メガバンク海外送金7,500〜10,000円+為替3〜5営業日

※手数料・所要日数は時期・金融機関・通貨・経路で変動する目安です。

マイナンバーと海外送金

マイナンバー制度の注意:

  • 100万円超の海外送金は「国外送金等調書」が税務署に提出される
  • 非居住者でマイナンバーがない場合、「マイナンバーなし」として処理可能
  • 金融機関はマイナンバー未提出のみを理由に送金を一律拒否するとは限りません

為替リスク管理

為替で変わる手取り(1億円を売却した場合のドル換算)

1ドル100円

100万ドル

1ドル130円

約76.9万ドル

1ドル150円

約66.7万ドル(足元の目安)

1ドル170円

約58.8万ドル

税金は円建てで課税されるため、円高局面ほど居住国通貨での手取りは増えやすい(目安)。

為替予約・分割送金の活用

手法効果
為替予約将来のレートを確定(為替リスク回避)
分割送金時期分散でレート平均化
多通貨口座円のまま保管・段階的両替
現地税金支払い用居住国通貨で必要分だけ送金

確定申告の実務(納税管理人経由)

確定申告のスケジュール

時期対応
売却年の翌年2月16日〜3月15日確定申告書の提出
提出先納税地を所轄する税務署
提出者納税管理人
納税・還付納税管理人の口座経由

確定申告書の作成ポイント

論点対応
譲渡所得の計算取得費・譲渡費用の算定(居住者と同じ)
源泉徴収税額の控除支払った10.21%を予定納税として処理
還付金の発生源泉徴収額>実税額の場合
買換え特例要件を満たせば適用可
取得費加算特例相続取得の場合に適用可

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遠隔売却のフロー(海外から日本物件を売る手順)

8ステップの実務フロー

海外から日本物件を売る8ステップ


1

納税管理人の選任(決済2〜3ヶ月前)

親族or税理士・届出書を税務署へ


2

在外公館で書類取得

サイン証明書/在留証明書/パスポート


3

仲介会社選定

海外売却実績・遠隔/英語対応・媒介契約


4

売却価格の設定

複数査定(オンライン)・相場/収益還元・為替考慮


5

売却活動・買主交渉

仲介が現地対応・ビデオ会議で面談


6

売買契約の締結

郵送or電子署名・サイン証明書添付・手付金は管理人口座


7

決済・引渡し

管理人が代理出席・司法書士が登記(本人不在可)・買主が10.21%源泉徴収


8

確定申告・還付・海外送金

翌年2〜3月申告・還付受領・海外口座へ送金

選任〜書類 1ヶ月

仲介・売却 3〜6ヶ月

契約〜決済 1〜2ヶ月

申告・還付 翌年3〜6月

合計5〜12ヶ月


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円安時の売却戦略とリスク

2026年4月時点の為替環境

  • 1ドル150円前後で推移
  • 円安が長期化する傾向
  • 日銀の金融政策修正期待で円高方向へ動く可能性もあり

円安時の海外居住者のメリット

  1. 日本の不動産価格が円建てで上昇傾向(都心部は円安で海外投資家からの需要増)
  2. 居住国通貨で受け取る金額は減少するが、日本の売却価格は上がりやすい
  3. 買主に海外投資家が参入 → 売却の選択肢が増える

円安時のリスク

  1. 居住国通貨で受け取る金額が減少(例:1ドル100円 vs 150円で33%減)
  2. 税金は円建てで課税 → 為替を意識した手取り計算必要
  3. 外国税額控除の計算が複雑になる

為替戦略のポイント

戦略効果
売却タイミングを円高局面に合わせる居住国通貨での受取額増加
為替予約で確定リスク回避・計画的売却
多通貨口座で円のまま保管円高を待って段階的両替
居住国での納税通貨に合わせる二重両替を回避

まとめ|海外居住者の日本不動産売却10のチェックポイント

10項目まとめ

#チェックポイント
1非居住者は売買代金の10.21%が源泉徴収される
2確定申告には納税管理人の選任が必須
3印鑑証明書の代わりにサイン証明書・在留証明書が必要
4マイナンバーは原則不要(ある場合は併用可)
5租税条約で日本の不動産譲渡益は日本で課税が原則
6居住国でも課税される場合は外国税額控除を活用
7海外送金はWise等のオンライン送金がコスト最適
8為替リスクは予約・分割送金で管理
9シンガポール・香港は現地で譲渡益課税が生じにくい(国別に確認)
10遠隔売却の実務フローで全ステップをオンライン対応可能

売主が準備すべき3つの柱

1. 人的体制:

  • 納税管理人(親族 or 税理士)
  • 日本の仲介会社(遠隔対応可)
  • 司法書士(登記代理)

2. 書類整備:

  • パスポート
  • サイン証明書(在外公館)
  • 在留証明書(在外公館)
  • 納税管理人の届出書

3. 資金管理:

  • 日本の納税管理人口座
  • 居住国の受取口座
  • 為替戦略(予約・分割)

最後に:独立系アドバイザーの価値

海外居住者の日本不動産売却は、税務(日本+居住国)・法務・登記・送金が複雑に絡む専門領域です。自社物件を持たない独立系アドバイザーは、売主利益の最大化を第一に、税理士・司法書士・海外送金の専門家との連携ネットワークで包括的にサポートできます。

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※本記事は2026年4月時点の法令・税制・為替環境に基づき一般的な情報を提供するものであり、個別の税務・法務相談は税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。居住国によって税制・租税条約の取扱いが異なります。

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