一棟マンションと一棟アパートは売却で何が違う?構造・耐用年数・融資・買主層・手取りを徹底比較【2026年版】

INDEX目次

「一棟マンションと一棟アパート、売却する際に何が違うのか?」——同じ「一棟物件」でも、この2つは構造・税務・融資・買主層・相続評価まで多くの点で全く異なる市場で取引されます。違いを知らずに売却活動を始めると、価格交渉・販売期間・手取り額で数百万〜数千万円の差が生まれることもあります。例えば木造アパートとRC造マンションでは、法定耐用年数が22年 vs 47年と2倍以上の差、融資期間も同比率で変わり、買主の属性も個人投資家中心 vs 法人投資家・ファンド主体と大きく異なります。本記事では、2026年4月時点の市場データを踏まえ、両者の売却における違いを9つの観点から徹底比較し、「どちらをどう売ればいいか」の実務的な判断基準まで解説します。

なぜ「一棟マンション」と「一棟アパート」の区別が売却に影響するのか

「同じ一棟物件」は誤解のもと

不動産投資の初心者・中級者にありがちな誤解が、「一棟物件はどれも同じ」という捉え方です。しかし、2026年の市場では構造ひとつで買主層・融資条件・価格形成が全く異なるため、売却戦略はまったく別物として設計する必要があります。

売却で違いを把握しないと起きる3つの失敗

失敗パターン具体例
価格設定を間違えるマンション価格帯の相場感でアパートを高値設定 → 長期在庫化
買主層を外す個人投資家向けの販路でマンションを売却 → 反響ゼロ
税金を読み違える木造とRC造で減価償却・売却時譲渡所得税が大きく変わる

本記事で網羅する9つの違い

  1. 構造・規模の定義
  2. 法定耐用年数・減価償却
  3. 融資条件(期間・LTV・金利)
  4. 表面利回り・市場相場
  5. 買主層・投資家属性
  6. 売却流動性・販売期間
  7. 修繕費・維持費(30年コスト)
  8. 相続税評価・節税効果
  9. 売却戦略・販路

売却の全体像は「一棟アパート売却の流れを5ステップで解説」、具体的な手取り計算は「収益物件の売却手取りはいくら?」もご参照ください。

① 構造・規模の定義の違い

一般的な業界定義

法律上「マンション」「アパート」の厳密な定義はありませんが、不動産業界では構造で区別するのが一般的です。

区分構造主な階数1棟あたりの戸数目安
一棟アパート木造(W造) / 軽量鉄骨造(S造)2〜3階4〜12戸
一棟マンション重量鉄骨造(S造) / 鉄筋コンクリート造(RC造) / 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)3〜10階以上10〜50戸

建築基準法・金融機関の扱いの違い

建築基準法上、3階建て以上・耐火建築物となる物件はマンション、2階建て以下の木造はアパートとして扱われることが多くなります。金融機関の査定では、構造コードで一律に区分されるため、投資家にとってもこの区別が実質的な判断基準になります。

構造区分建築基準法での位置づけ金融機関での扱い
木造(W造)耐火要件が緩い・低コスト短期融資・担保評価低
軽量鉄骨(S造・厚さ3mm以下)準耐火構造短〜中期融資
重量鉄骨(S造・厚さ6mm超)耐火構造中期融資
鉄筋コンクリート(RC造)耐火構造・耐震性高長期融資・担保評価高
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)最上位の耐火・耐震最長融資・担保評価最高

ポイント: 重量鉄骨3階建ては「アパート」に見えても、構造的には「マンション」区分になる場合があり、評価・融資条件が変わります。物件資料を整理する際は、検査済証・建築確認通知書の構造表記を必ず確認しましょう。

② 法定耐用年数・減価償却の違い(最重要)

法定耐用年数の比較

構造法定耐用年数物理的寿命の目安
木造(W造)22年50〜60年
軽量鉄骨造(厚さ3mm以下)19年40〜50年
軽量鉄骨造(厚さ3〜4mm)27年50年
重量鉄骨造(厚さ6mm超)34年60〜70年
鉄筋コンクリート造(RC造)47年68〜100年
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)47年100年超

減価償却の具体例

条件: 建物取得価額 1億円の場合の年間償却費(定額法)

構造年間償却費30年累計償却費
木造アパート約455万円/年約1億円(22年で終了)
RC造マンション約213万円/年約6,390万円(47年継続)

重要: 木造は償却期間が短いため短期で大きな節税が可能ですが、22年以降は償却費ゼロになり税負担が急増します。RC造は償却費が小さいものの長期にわたり継続するため、安定した節税効果があります。

売却時の譲渡所得への影響

減価償却が進むと建物簿価が下がり、売却時の譲渡所得(売却益)が大きくなるため、譲渡所得税も増えます。

項目木造アパート(築25年)RC造マンション(築25年)
建物簿価ほぼゼロ(償却完了)約4,700万円残存
譲渡所得売却価格ほぼ全額に課税簿価控除後に課税
譲渡所得税の比較高くなりやすい相対的に低い

詳細は「収益物件の減価償却が終わったら売却すべき?」もご参照ください。

③ 融資条件の違い(期間・LTV・金利)

融資期間は「法定耐用年数以内」が97%

金融庁の「投資用不動産向け融資アンケート」では、銀行の97%が融資期間を物件の法定耐用年数以内に設定していると回答しています。これは構造別に融資期間が大きく変わることを意味します。

融資期間の目安

構造新築時の融資期間築10年時の融資期間築20年時の融資期間
木造22年12年2年(実質融資不可)
重量鉄骨34年24年14年
RC造35年(金融機関上限)25〜30年15〜20年

ポイント: 木造アパートは築15年を超えると買主の融資期間が極端に短くなり、買主候補が現金買いに絞られる傾向があります。

LTV(融資対象比率)の違い

構造2026年の一般的LTV備考
木造(築15年以内)70〜85%金融機関次第で変動
木造(築20年超)50〜70%事業性融資が中心
RC造(築15年以内)80〜95%フルローン可能性あり
RC造(築30年超)60〜80%残存耐用年数で判断

金利水準(2026年4月時点)

構造・属性変動金利目安固定10年目安
木造・個人投資家2.0〜2.8%2.8〜3.5%
RC造・個人投資家1.5〜2.3%2.3〜3.0%
RC造・法人投資家1.0〜1.8%1.8〜2.5%

金利と売却の関係は「金利上昇局面で収益物件は売却すべき?」もご覧ください。

④ 表面利回り・市場相場の違い(2026年データ)

2026年の利回り相場比較

区分全国平均表面利回り首都圏(都心5区)首都圏(郊外)
区分マンション約7.02%4.0〜5.5%6.0〜7.5%
一棟マンション約7.71%4.5〜6.0%6.5〜8.0%
一棟アパート約8.10%5.5〜7.0%7.5〜10.0%

傾向: 一棟アパートはリスクプレミアムが高い分、表面利回りが高い。逆に一棟マンションは安定性が評価され、利回りは抑えられる

市場規模と取引数

区分1棟あたり平均取引価格年間流通件数(推計)
一棟アパート5,000万〜1億5,000万円多い(個人投資家参入可)
一棟マンション(築浅)2億〜20億円中程度(法人投資家中心)
一棟マンション(築古)1億〜5億円少ない(限定的買主層)

利回りトレンド(2026年4月時点)

  • 2026年に入り変動金利上昇局面で、買主の購入力低下 → 利回り重視の引き上げ圧力
  • 都心部の一棟マンションは希少性で高値維持、郊外の築古木造アパートは利回り低下圧力
  • インバウンド需要回復でホテル・民泊転用可能な一棟物件は別カテゴリで高値

⑤ 買主層・投資家属性の違い

一棟アパートの主な買主層

買主属性特徴
個人投資家(サラリーマン)年収700〜1,500万円中心。アパートローン利用
地主・資産家土地値重視。相続対策として取得
中小企業経営者法人で保有。節税目的
不動産会社(リノベ再販)築古を購入→改修→再売却

一棟マンションの主な買主層

買主属性特徴
富裕層投資家数億円規模の自己資金。プロパー融資
法人投資家・オーナー企業資産運用・本業シナジー
不動産ファンド・REIT大型物件専門。キャップレート重視
海外投資家都心一等地に集中。円安局面で増加

買主属性の違いが売却活動に与える影響

要素一棟アパート一棟マンション
買主の判断基準利回り+節税効果安定性+長期保有価値
意思決定スピード速い(個人判断)遅い(稟議・投資委員会)
値引き交渉強め控えめ(価格と価値で判断)
販売チャネルポータルサイト・個人投資家網業者間ルート・ファンド直接

仲介会社選びの詳細は「一棟売却の不動産会社選び方」もご参照ください。

⑥ 売却流動性・販売期間の違い

販売期間の目安(2026年市場)

区分平均販売期間最短長期化ケース
一棟アパート(築10年以内)3〜6ヶ月1ヶ月12ヶ月超
一棟アパート(築20年超)6〜12ヶ月3ヶ月販売中止・値下げ
一棟マンション(築10年以内)3〜6ヶ月2ヶ月8ヶ月超
一棟マンション(築20年超)6〜12ヶ月4ヶ月1年超も

流動性に影響する要素

要素アパートマンション
価格帯低〜中(買主が多い)高(買主が限定)
融資通りやすさ築浅は通る、築古厳しい築浅・築古とも通りやすい
買主プール広い(個人〜法人)狭い(法人中心)
エリア依存高い低〜中

「売りやすさ」の逆説

一般的に「アパートの方が価格が安く売れやすい」と思われがちですが、築20年を超えた木造アパートは融資ネックで急速に売れにくくなるという現実があります。一方、RC造マンションは築30年でも融資が通りやすく、長期的な流動性は実はマンションの方が安定しています。

長期在庫化の原因と打開策は「収益物件が売れない7つの原因と打開策」もご覧ください。

⑦ 修繕費・維持費(30年コスト)の違い

30年間の修繕費累計(概算)

物件タイプ30年累計修繕費1戸あたり累計
木造アパート 10戸約800〜1,000万円80〜100万円
RC造マンション 10戸約1,770万円約177万円
RC造マンション 20戸約4,490万円約225万円

修繕周期の違い

修繕項目木造アパートRC造マンション
外壁塗装10〜15年ごと(80〜150万円)12〜15年ごと(400〜1,000万円)
屋根・防水15〜20年ごと(100〜200万円)12〜15年ごと(300〜800万円)
給排水管30年(100〜200万円)30年(1,000万円超)
エレベーター保守なし年間50〜100万円+大規模改修

売却時の修繕履歴の重要性

買主は修繕履歴を詳細にチェックします。特にマンションでは大規模修繕の実施履歴・今後の計画が価格交渉の重要要素になります。

資料買主の確認ポイント
修繕履歴書過去10年の実施内容・費用
長期修繕計画書今後15年の予定・費用見積
修繕積立金残高計画に対する充足度
設備更新履歴エレベーター・給湯器・給排水管

資料を充実させることで価格維持に直結します。詳細は「収益物件を高く売るコツ」をご覧ください。

⑧ 相続税評価・節税効果の違い

相続税評価の基本式(貸家建付地)

相続税評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

  • 借地権割合:30〜90%(エリアで変動、都心は高め)
  • 借家権割合:30%(全国一律)
  • 賃貸割合:満室なら100%、空室で減少

構造別の相続税評価への影響

要素木造アパートRC造マンション
建物の相続税評価額固定資産税評価額(取得価格の約40〜60%)固定資産税評価額(取得価格の約50〜70%)
土地の評価減最大21%(借地権60%×借家権30%×満室100%)同条件で同じ
実質評価減の幅大きい(取得価格比で50〜70%評価)中程度(60〜80%評価)
1戸あたり土地持分大きい小さい(戸数が多いため)

相続時の「評価減効果」の具体例

条件: 土地1億円、建物1億円で取得した木造アパート(満室)

  • 自用地評価:1億円
  • 貸家建付地評価:1億円 × (1 - 0.6 × 0.3 × 1.0) = 8,200万円
  • 建物評価(固定資産税評価):約5,000万円(時価比50%)
  • 建物貸家評価:5,000万円 × (1 - 0.3 × 1.0) = 3,500万円
  • 合計評価額:1億1,700万円(取得価格2億円比で約58%評価)

5年ルールの影響(2027年1月〜)

重要: 2026年度税制改正で、非上場株式の純資産価額方式における不動産評価が変更されます。

  • 旧ルール: 課税時期前3年以内に取得した不動産は時価評価
  • 新ルール(2027年1月1日〜): 5年以内に取得した不動産は時価評価

つまり、法人で収益物件を相続対策として取得する場合、5年以上前に取得しておく必要があります。一棟物件の選び方も長期計画に組み込む必要があります。

詳細は「収益物件の買い替え特例完全ガイド」をご参照ください。

⑨ 売却戦略・販路の違い

アパートとマンションで異なる販売チャネル

チャネル一棟アパート一棟マンション
REINS
健美家・LIFULL HOME'S
投資家ネットワーク
不動産ファンド・REIT×
業者間ルート
海外投資家ルート

プレゼン資料の作り方の違い

一棟アパート向けの資料構成:

  1. 表面利回り・NOI利回り
  2. 立地・周辺賃貸需要レポート
  3. 修繕履歴・レントロール
  4. 想定キャッシュフロー
  5. 節税効果のシミュレーション(減価償却)

一棟マンション向けの資料構成:

  1. キャップレート・IRR(内部収益率)
  2. 長期修繕計画・CAPEX予測
  3. 管理品質・設備更新計画
  4. エリアマーケットレポート
  5. バリューアップ余地(リノベ・用途変更)

マンションでは「10年後の想定売却価格までを含めた投資リターン」を示すことで、機関投資家・法人投資家の興味を引きやすくなります。

価格設定の基本的な違い

区分価格算出の基本
一棟アパート表面利回り逆算(相場利回り × 年間家賃)
一棟マンションDCF法(割引キャッシュフロー)・キャップレート

どちらを売るべきか?5つの判断基準

① 保有期間と税制

保有期間推奨
5年以内(短期譲渡)売却は慎重に。税率39.63%
5年超〜10年税制有利・市場判断で
10年超買換え特例の要件あり・組み換え検討

② 融資環境

状況推奨
金利上昇局面変動金利の木造アパートは早期売却検討
低金利維持RC造マンションの長期保有は有利

③ 減価償却の状況

状況推奨
減価償却終了税負担増 → 売却・買い替え検討
減価償却中節税効果を継続

④ 次の資産戦略

戦略推奨
現金化して他資産へアパート・マンションとも売却
収益物件を維持買換え特例で乗り換え
相続準備評価減が大きい木造アパート有利

⑤ 買主市場の状況

状況推奨
個人投資家市場活況木造アパート有利
法人投資家市場活況RC造マンション有利
ファンド・REIT購入強気大型マンション有利

出口戦略全体は「収益物件の出口戦略|売る・持つ・組み替えの判断基準」もご覧ください。

売却事例の比較:同等予算の2物件

ケース1:郊外の築20年木造アパート(価格1.2億円)

項目内容
構造木造2階建て・12戸
表面利回り8.5%
買主候補個人投資家(サラリーマン)・地元地主
融資15〜20年・LTV 70%
販売期間4〜8ヶ月
強み利回りの高さ・節税効果大
弱み融資期間が短い・建物寿命残少

ケース2:都心の築25年RC造マンション(価格1.2億円)

項目内容
構造RC造5階建て・10戸
表面利回り5.5%
買主候補法人投資家・富裕層・不動産会社
融資20〜25年・LTV 80%
販売期間4〜7ヶ月
強み立地の希少性・融資通りやすい
弱み利回り低め・修繕負担大

同じ1.2億円でも、狙うべき買主・販路・プレゼン方法が全く異なることが分かります。

まとめ|「構造×立地×買主」の3軸で戦略を決める

9つの違いの総括表

比較項目一棟アパート(木造中心)一棟マンション(RC造中心)
① 構造・規模木造2〜3階、4〜12戸RC造3〜10階、10〜50戸
② 法定耐用年数22年47年
③ 融資期間短い(築浅15〜22年)長い(築浅30〜35年)
④ 表面利回り7〜10%5〜8%
⑤ 買主層個人投資家・地主法人・ファンド・富裕層
⑥ 流動性(築古)急速に低下比較的安定
⑦ 修繕費(30年)800万〜1,000万円1,770万〜4,490万円
⑧ 相続評価減大(土地持分大)中(戸数多く土地持分小)
⑨ 販路・プレゼンポータル+個人投資家網業者間+ファンド直接

実務的な売却戦略の選び方

目的最適な売却戦略
短期で高利回りを実現築浅の一棟アパートを個人投資家網で売却
長期保有で安定RC造一棟マンションを法人投資家へ
相続評価を最大化土地値の高いエリアの木造アパート
規模拡大(買換え)複数のアパートを売却→1棟マンションへ集約
完全撤退(現金化)流動性の高い物件から順に売却

最後に:数字だけで判断しない

どれだけ詳細な数字を揃えても、「いつ・誰に・どう売るか」という売却活動の質が最終的な手取りを決めます。特に一棟マンション・一棟アパートは買主市場が分かれるため、販路選定と仲介会社の選び方が最も重要です。

独立系アドバイザーの意見を聞きつつ、自分の物件がどの層に刺さるかを見極めることが成功への近道です。売却検討初期の方は、「一棟マンション査定の方法と計算式」「収益物件売却の媒介契約|専任vs一般」もあわせてご覧ください。

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